妄想の産物

□ある夜明け前
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死屍累々
そんな感じで、浜に揚げられた魚の様に
また、子供が散らかした後の部屋の様に


今の自分の周りには大量の人間が転がっていた





∞∞∞∞∞∞∞∞∞






















それは山の奥の道での出来事で


もういっそ清々しい程の暴力だったわけで
しかも暴力を放ったその本人は座ったままで




怖かった、いや襲撃が、というわけじゃない
恐かった、味方が、だ


現在、自分の車でふんぞり返ってる味方が、だ





















その時の彼は輝いていた
彼の腕の先
手の先の二丁拳銃
不意の襲撃に不機嫌に細められた黒く暗い眼光が

彼の元来良くない目付きが更に悪くなったんだ











何処の差し金か
恐らくたった二人と鷹をくくった奴らは、睨まれた蛙の如く一瞬動きが止まった



一瞬だった
だが彼も自分もプロだ



敵方の一瞬の怯みは
此方にとってはインスタントラーメンを待つ位の攻撃時間を与えられたのと同義












悲しきかなだけどそれが現実

まぁ、さっきのあの目に恐怖と畏怖を抱かない人間はそういない事だろう

彼等の殺気の類いは本能に直接的な格の違いを
原始的かつ根源的な恐怖を感じさせる




…例外を除いてだが
自分の家庭教師曰く
戦闘狂雲の守護者曰く
正体不明霧の守護者曰く

彼等は特別、半分人間じゃない
と、しみじみ思う












この殺気を受けて命の危険を感じこそすれ、陶酔できるとはどういう生き物だ





……自分とは生き物の種族が違う気さえする
怖いから口には出さないけれども





















そして気まぐれにに十年前の事を思い出す






あの頃は日常茶飯事で殺気を向けられる生活なんて夢にも思わなくて

とゆうか思いたくもなくて


元凶は誰なのか、と父親や家庭教師を恨んだものだ













だってそうだろう
いきなり幻覚なんて非現実的な技を使う術師に、貴方の身体を乗っ取りますと襲われ

それが終わったと思ったら
次は欲しくもない指輪を押し付けられ、その指輪を追って来た一級品の暗殺部隊とサドンデス指輪争奪戦…



その指輪は今、皮肉にも自分の指に嵌まっているが

















それ以外にも色々あって、結局なりたくもない…イタリア随一と畏れられるボンゴレマフィアのドンになってしまった


ボスになってしまった時のあの家庭教師の顔ときたら…



…思い出したくもない




「おい」

呼び掛けられ現実に戻る



「片付けろ」

「………俺が?…」

「早くしろカス」

「…………………」




なんて言うか、もうボスに対する態度じゃないよね


いや実際彼の組織は未だ自分をボスと認めず九代目の管轄下にあるが



「カッ消す!!」

「うわぁぁっ!」

しまった
考えてる暇なんて与えてくれる相手じゃなかった


「待った、待って!片付けるから」

「早くしろドカスが」


不満は残るが一応従う

昔から頼まれると勝手に体が動くのだ
今のは命令だが大差はない







∞∞∞∞∞∞∞∞∞

































片付け終わる頃には東の空が明からんできた
西の空に十六夜が浮かんでる


もうすぐ東から眩しい太陽が顔を出す









すると自動的に自分は徹夜と云う事になる……
虚しい


当然の様に手伝いもせず、車で眼を閉じている彼も

いや、眼を閉じているのだから寝ているのかも知れない



考えを一蹴した。
有り得ない、彼が他人、しかもよりによって自分の領域で休息を摂るなんて

また静かに怒鳴られるかもしれない


その前に車に戻る






片付けるといっても隅の方に寄せただけだ

ドンボンゴレを襲うんだ敵もそれなりの覚悟はあるだろう










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