おお振り
□俺と俺
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目が覚めると見慣れた天井が目に入ってきた。
辺りを見渡すと、いつもの景色の中に阿部君の姿があった。
「阿部…君?」
「三橋!大丈夫か?部活中、いきなりぶっ倒れたんだぞ」
話を聞くと、母さんは仕事の合間を縫って迎えに来てくれて、俺をベッドに寝かすとまた仕事に戻ったらしい。
阿部君は部活を終えた後に俺の荷物を届けに来たら誰も居なかったから傍に居てくれたみたい。
鍵が掛かってなくて驚いたと言っていた。
「あの、阿部君。荷物ありがとう」
「ああ、どう致しまして」
阿部君はベッドに座った。
俺も阿部君の方に体を向けた。
「いきなりぶっ倒れるからびびったぞ。心配させんなよな」
阿部君は俺の事心配してくれたんだ。
何だか嬉しくてどきどきした。だけど…
「試合、控えてんだ。無理して欲しい所だが、強くは言えないよな…」
阿部君は、ピッチャーとして俺が心配だったの?野球部のメンバーとして心配だったの?
それも凄く嬉しい事なんだけど…阿部君が相手になると何だか欲張りたくなるのはどうしてだろう。
「三橋が潰れたら、正直西浦は負けるだろうな。花井のピッチングも悪くない。だけど、キャリア的に浅いし、三橋に比べたら…」
やっぱり俺がピッチャーだから仲良くしてくれてるの?俺の投げる球だけが心配?俺だって頑張るよ、阿部君の為に。
でもさ…
「阿部君は…」
知らないうちに言葉が出てきていた。
「阿部君に俺は必要なの?」
「当たり前だろ?バッテリーなんだからな」
「ピッチャーとしてしか俺の事見てないの?」
「何言ってんだ」
「阿部君は…!!」
俺はベッドから起き上がった。
阿部君と目を合わせたら、涙がポロポロ落ちてきた。
「三橋?」
「阿部君は、ピッチャー以外の俺は好きになってくれないの?」
言って後悔した。阿部君に強く当たってしまった。しかも好きって言っちゃった。
嫌われちゃう。
俺はまた野球部に居られなくなっちゃうんだ…
「三橋…」
「……っ」
「また、お前はそうゆう風に考える。良いか?もちろんピッチャーとしての三橋は最高だよ。でもな、ピッチャーじゃない時の三橋の事も俺は好きだから」
「ほんと?阿部君は俺の事…好き?」
「あぁ」
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