・・・の憂鬱
□ちょっとした心残り
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扉を開けるとそこには古泉だけが一人ぽつんとパイプ椅子に座っていた。ハルヒや朝比奈さんどころか、いつも居るはずの長門の姿すらない。時間的に皆が居てもおかしくないが、居ないものはしょうがない。
「おや、キョン君。涼宮さん達と一緒じゃなかったのですか?」
「ああ、放課後誰一人として部員に会わなかったぞ」
「そうですか、めずらしいですね」
誰も居ない事を良い事に、キョンは古泉の向かいではなく隣へ向かった。椅子は古泉の方に寄せて座る。
「静かだな…」
「そうですね」
特に話題もないので無言のまま時間がすぎる。
ハルヒの特等席はだんだんとオレンジ色の光に包まれていった。
「そういえば…」
古泉は何か思い出したようにカバンの中に手を延ばした。
「これ、良かったらキョン君の妹さんに」
渡されたのはトッポ。
しかも1箱だけではない。
「…3箱も」
「友人がゲームセンターで落としたそうで、くれたのですが僕には食べきれる量ではなかったので…良かったらどうぞ」
「じゃあ遠慮無く」
2箱閉まった辺りでふと記憶が蘇った。
少し心残りだったな、あの時は…とキョンはトッポを1箱開けた。
「やろうぜ、この間の続きと言っちゃあ難だが」
トッポを1本出してくわえると、立ち上がってドアの鍵を締めに行った。
「えーっと、先日のポッキーゲームの事でしょうか?」
「他に何があるんだ?」
「そうですよね」
口元に指を当てて笑うと、古泉はキョンに向き直り、キョンがくわえているトッポの逆をくわえた。誰も居ないから、お互い躊躇う事無く食べていくとあっという間にトッポは短くなり、そのまま唇を重ねた。
「…っん」
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