・・・の憂鬱

□チョコの代わりに
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「あのぉ…キョン君」

古泉とのオセロが一区切り着いたところで…もちろん俺の勝ちだ…朝比奈さんが改まった様子で俺の傍に来た。お茶はさっきもらったばっかりだし、一体何の様だろうか。

「今日は、その、バレンタインデーなのでお菓子を作ってみたのですが…」

なんと、朝比奈さんは俺にバレンタインデーのお菓子を!まあ、これは所謂義理チョコ…いやいや友チョコと言った方が響きが良いな。でも嬉しいね、こんな可愛い子にもらえるなんて。
そう考えていると、ほらやっぱりな。朝比奈さんは新しい包みを出しながら古泉の方へ向かった。

「古泉君も…どうぞ」

「僕もですか?ありがとうございます。これはホワイトデーにお返ししなくてはいけませんね」

と、古泉はいつもと変わらぬ笑顔で受け取った。
しかし、何だ。古泉のカバンの脇にある紙袋の事だが…可愛いラッピングがされた包みが漫画で描写されるが如く詰まっている。気に食わん。俺は生まれてこのかた1度も本命をもらった試しが無いんだよ。
朝比奈さんは長門にもお菓子を渡していた。長門は相変わらずの無表情でお礼を言ったかと思うとすぐにハードカバーの分厚い本に視線を落とした。

「やっほー待たせたわね!」

大きな音を立てて現われたのは…言うまでもない、ハルヒだ。

「あ、こんにちは涼宮さん。涼宮さんもどうぞ」

勢い良くドアを閉めたハルヒの所に朝比奈さんが駆け寄った。

「あら、何これ」

「バレンタインデーのお菓子です。甘いの平気でしたよね?」

「バレンタイン!?すっかり忘れてたわ。でも、ありがとうねみくるちゃん」

おい、ハルヒ。質問に答えろ。
しかし、ハルヒは一向に朝比奈さんの質問に答える様子も無く話題を変えた。まあ、もらったという事は平気なんだろうな。

「最近は友チョコって言うのが流行ってるわよね」

ニュースによれば本命チョコなんかより友チョコに力を入れてる人が多いとか何とかって聞いた事がある。しかし、ハルヒの事だ。本命チョコどころか友チョコすら作らないだろうな。

「ねえ、男同士って交換するのかしら。女同士は沢山見てきたけど、男同士では見た事無いのよね」

バチッとハルヒと目が合ってしまった。やっちまったな、俺。

「男は無いんじゃないか?な、古泉」

と、古泉に話を振ってから俺は後悔した。まだ谷口とか国木田だったら、このままのノリで話が終わったはずだ。しかし、相手は古泉だ…



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