おお振り

□俺は
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昼休みの別れ際

突然言われた言葉

一瞬、何の事だか分からなかった。

「俺、花井の事…好きだかんな」

物凄く真剣な表情をした田島だったが、言い終わった次の瞬間にはいつもの顔に戻って走り去っていた。






呆気に取られていた俺は何の返事も出来ないまま田島の背中を見送っていた。
田島に好きと言われて一瞬でもドキッとした俺は馬鹿だ。よく考えてみれば田島らしい挨拶じゃないかよ。

「は…ははは」

「どうした花井」

「否、何となく声に出して笑いたくなったんだよ」

隣でユニフォームに着替えている阿部は俺の方をちらっと見ると

「あ、そう。お大事に」

と言ってさっさと着替えを済まし、部室を後にした。
俺も直ぐに着替えて部室を出た。

「花井ぃー、最後だぞ!」

そう言ったのは田島だった。

「おう、わりぃ」

返事をした俺は皆の所までダッシュをした。



普段通りの練習をして、ミーティングをして、部室へ戻る。いつも通りの部活だった。
田島もいつも通りで、普通に会話した。やっぱりあれは田島なりのコミュニケーションだったんだな。本気で悩もうとしていた俺は本物の馬鹿じゃないか。

「お先しつれー」

水谷を皮切りに部員が次々に帰っていく。
鍵閉めは俺の仕事だから当然最後に残ったのは俺だけ……では無かった。

「あれ、田島帰んねえの?」

田島は出入口付近の壁に寄り掛かっていた。

「…今日の事」

そう言うと田島はベンチに座った。



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