短・中編

□Once again
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白い、白い。

光を浴びる雪と、消えかけたひとつの願い。





Once again









「ガイ、どうしました?」
「……きれいだな」

雪の降る雪原。
しかし、空はそれに反して青く輝いている。
山風に乗った粉雪は、サラサラと流れながら降り注ぐ。

陽気な皇帝からの勅命で、やってきたこの場所。ガイは、輝く何かを視界に感じ、ふと空を見上げた。

ヒラリ ヒラリ と。
陽の光の中に輝く、小さなカケラたち。

「あぁ、風花ですか。見慣れていたので、何の感慨も湧かなかったのですが…」

そう言われて見れば、と、ガイにつられて、ジェイドは空に目をやる。
凍った光の粒は、キラキラと輝きながら宙を舞っていた。

「風に舞う雪の花…確かに、キレイかも知れませんね」

にこっと微笑みながら、ガイに視線を戻す。
しかし、その光の粒をキレイと言ったガイ本人は、その微笑みに哀しげな視線を返しただけだった。

「……ガイ?」
「…キレイだけど、寂しいな」

光を受けて輝く雪の粒。
空は晴れ、雪は降る。そんな偶然に似た条件だ備わった時にだけ、出会える光。
頭に、肩に。キラキラと舞う粒は、体に触れた途端、あっという間にその姿を消す。

「……あ」

そ、と服の上に、光の粒が舞い降りる。
一呼吸をあけた次の瞬間、それは音もなく、小さな水滴へと変わっていった。

「行きましょうガイ。晴れてるとはいえ、ここは冷える」
「ん…そうだな」

ガイの言葉に何かを感じ取ったジェイドは、その場を去ることを良しとした。
光。彼の中で未だ燻り続ける、紅の光。

「…また、いつか」

ふと、再び肩に感じる白い気配。
それを降り払おうとして、やめた。
消えて行く一瞬の儚い光。
それを、無下に消すことなく、ただ自然の流れに任せ、消える時を待つ。


自分もそうあればいいと。

かつて願った淡い願いが、胸の中でふ、と甦った。




END.
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