短・中編

□R)饐えた感情
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どうせなら、いっそ責めて責めて、底まで追い詰めてくれたなら。
きっと私は救われたのだろうか?





「あっ…や、め…ヴァンっ…」

本来、男を受け入れるためにあるのではないソコに、熱く猛った己の熱を侵入させる。
お互いに服は脱がずに、ただ行為をするために必要なその場所だけを開けた即物的な格好で、獣のように交わった。

久々に出会ったのはベルケンドだった。
ちょうどフォミニンの採取も終わり、一息つく意味も込めて散歩へ向かった。
特に理由もなく、フラリと立ち寄った回転する譜業のすぐ脇に、彼はいた。
日々のなか、1日の休養を与えられたその彼を。

「っお願…も、許し…ッ」

ガクガクと揺さぶり、中を突き破るほどの勢いで突き上げる。
この一瞬、壊すように犯したかった。










『仲間にならないか』
何度呼び掛けてもなかなか応じてくれない彼に業を煮やし、こちらから出向いて伝えたこともある。
しかし、いつも決まってその答えは受け入れに応じないものだった。

何故なのか。

何故彼は、それほどまでに自分を拒むのか。
…本当は分かっていた。
答えの出ているそれを、まだ解けない疑問にすることで、受け入れない彼が悪いのだ…と。そう思い込むことで、想いを断ち切ったつもりでいた。

だが、実際はどうだろう。

久々の再会に、もう一度投げ掛けたその言葉を、あっさり投げ捨てられてしまった。
怒りでも、悲しみでも、憎しみでもない。
何が何だか分からなくなるような、そんな激情。

そして、その感情のまま嫌がる元主を無理矢理自室へ連れこみ…そして今の状況に至る。

「っ…く、ぁ…」

机に突っ伏し、後ろだけ晒した彼を突き上げる。
声だけは出すまいと、机に爪を立てて堪える姿に、嗜虐心を煽られた。
抵抗し、暴れた体の所々に擦れたような跡が残っている。
肩にあるその跡を舌でベロリと舐め上げれば、自分を受けているソコがギュッと締まった。

「気持ちいいのですか…?」

クスリ、と笑って囁くと、羞恥に染まった視線が自分を見据える。

「ッ離せ…っ」
「離しません」

彼を、こんな体にしたのは…恐らくマルクトの死霊使いだ。
今犯している彼に男を教えたのは自分だった。

まだ幼い彼に、出来る限り優しく…壊れないようにと。
その頃はまだ、自分を拒まず、縋るような目で見つめてくれていた。
そんな彼をとても愛しいと思い、そして守りたかったのだ。

だからこそ、自分は…

しかし、突然現れたあの男に、体も…心までも奪われてしまった。

「ガイラルディア様…」
「あ…あぁっ…」

かつての名前で囁く。
イヤだ、止めろと言ってはいても、体は正直なものだった。
深く貫けば奥へ誘われ、引き抜こうとすれば離すまいと絡み付いてくる。

「っあぅ…!」

突然彼自身を強く握りこむと、目の前の背中が大きくしなった。
そのまま優しく扱いてやれば、自分を受けいれる腰が緩やかに揺れた。
必死に堪えようと腕を噛み、体に力をいれているようだったが、それで逆に中の熱の形をリアルに感じ取ってしまったらしく、逆効果だった。

「あっ、ふ…んんっ…」

限界に近い。

腕の中のその細い体がガクガクと震えている。
握り込んだ自身も、解放を求めて涙を流していた。
それを確認し、今までより激しく腰を揺らす。

ぎり、と。強くなった快感に、机に立てた爪から血が出ていた。
しかしそれに気遣うことはなく、彼の感じるところを擦り、最奥まで突き上げて追い上げる。

「あぁ…っ、く…んぁ…っ」

ドクン、と一旦脈打って、彼は熱を解放した。
それに続くように、自らもその体の奥深くに解き放った。



















「………」

意識を飛ばし、眠る横顔に、そっと手を触れる。
傷付いた体…そして伝ったその涙の跡。
痛々しいと感じつつも、それを作ったのは自分なのだ。

何をしているのだろう。

きっと、こんなことがしたかったわけではないのだ。手に入れたかった。
手に戻したかった。
かつての彼を、この手に…そこで、思考を止めた。

「…申し訳ありません…」

意識のないその人に囁く。
きっと、目を覚ました彼は、自分を強く責めたりはしないだろう。

それが、彼の優しさなのだ。
こちらの世界に足を踏み入れた自分には酷く辛い、その優しさ。
いっそ、強く罵って、殴ってもらいたい。

そうすれば、今度こそ彼への思いに、幕を引くことが出来るから…。
お互いが、感情に遮られることなく、全てを全うできる。

…なのに…きっと、心のどこかで望んでいるのかもしれない。

まだ、手に入れることができると。

許して貰えると。


彼の優しさに甘えたかっただけなのだ。


「すまない…」

もう一度溢れた呟きは、誰に向けたものなのだろうか。
目の前の彼に…または、自分のこのふざけた感情に…?

嘆きにも似た感情は、夜の深い闇に飲まれていった。







 

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