短・中編

□R)贖罪愛
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贖罪愛





「ガイ…っ」
目の前で崩れ落ち、片膝をついた金糸の髪の男。

彼を心配する仲間の声が、ただ遠巻きに聞こえた気がした。




『贖罪愛』




やってしまった。
譜術の詠唱に集中しすぎて、真後ろに迫った気配に気付かなかった。

「大丈夫ですか、ガイ?」

声をかけた相手の目には、真っ白な包帯が巻かれている。

「ん〜…何かまだちょっと熱い感じだけど…大丈夫だよ」

そう言って微笑んだ。







ようやく敵の気配を察知し、後ろを振り返った直後に、目の前にガイが現れた。

モンスターの吐いた毒の霧が彼の目を直撃し、それと同時に彼は敵の息の根を止めた。

ナタリアのリカバーで大事には至らなかったのがせめてもの幸いだったが…

「私としたことが情けない…とんだ失態でした。申し訳ありません…」
「ははっ、珍しいな。あんたがそんなにショゲた声出すなんてさ」

気にするなよ旦那、そう言ってまた彼は笑う。


いつもそうだ。


ガイの持ち味である素早さ。
時には敵を探るために真っ先に斬り込み、時には後衛を守るためにフィールドを駆け回る。
戦いに危険はつきものだが、元々打たれ弱い彼に生傷はたえない。

それでも彼は「大丈夫」の一言と笑顔で済ませてしまう。


「ガイ…」
何故だか堪らなくなり、思わずガイの体を抱き締めた。

「何だよ、アンタが責任感じるこ事はナイだろ?俺たちはそれぞれの役割を果たそうとしただけだし」

当たり所が悪かっただけだよ、と言って抱き締めかえしてくる。

「……ガイ」
「…ん?」

怪我人相手に不謹慎だとは思ったが、そんな事に構ってはいられなかった。

「抱かせてください…」
「……旦那…?」

暫くの沈黙の後、仕方ないな、と笑って首に手を回してくる。
それと同時に、目の前の男をベッドに縫い付けた。





「…っんぁ…っ…」

目が見えないせいで、いつもより敏感に反応する体を、いつもよりも優しく愛撫する。

「ガイ…」

ガイが崩れ落ちたあの瞬間、一瞬全ての感情を失ったような感覚に陥った。

「っは…ぁ、ジェ、イド…どう…した…?」

普段と様子の違うジェイドに気付いたのか、途切れ途切れの言葉をつむぐ。

「…貴方が目隠しをしているからでしょう?…見えないと感じますか?」

悟られた事に何と無く腹が立ち、意地悪な言葉を投げ掛ける。

「…っ…」

案の定、顔を真っ赤にして唇を噛み締めた。

「可愛いですね…貴方は」

変わらず、いつでも相手を気にかけているガイの態度に、自分にも少し、いつものペースが戻ってくる。

「ジェイド…?」
ガイが問いかけてきたその瞬間、彼の中に埋めていた指をクの字に曲げる。

「あぁ…っ…」

突然の快感に、ガイの体が大きくしなった。

「ここをこうされるの…好きですよね…?」

クスリと笑って、指で彼の性感帯を擦る。

「ふ、ぁあ…っ、や…っ」
「…ガイ…可愛いですよ…」

言って、小さく喘ぐその唇に自分の唇を重ねた。

「んっ…ふぅ…」

ビクビクと震えるその体を抱き寄せ、中の指を抜き去る。ピクン、ともの惜しげにヒクつく体。

「ガイ…挿れますよ…」

一言断り、自身をあてがう。
いつもはすんなりと自分を受け入れていくその体はしかし、見えない恐怖のために幾らか強張っていた。

「ガイ…大丈夫ですよ、力を抜いて…?」
「っ、ジェ…ド…ッあ」

力を抜くよう促し、首筋をねっとりと舐めあげる。

同時に震える彼自身を軽く擦ってやると、一瞬フッと彼の力が抜けた。
その隙を見逃さず、一気に突き挿れる。

「っひ、あぁ…ッ」
「…っん…」

急激に訪れた圧迫感に、ガイが悲鳴のような声をあげた。

「あ、はぁ…ぅ…」

そっと包帯の上から彼の目に触れる。

まだ、熱を持っていた。

「ん…ジェイド…?」
「貴方の、潤んだ瞳が見れないのは残念ですが…」

私の責任なので仕方ありませんね、と言った瞬間、ガイが私を受け入れている腰を自ら突き動かした。

「ぁ…っ…」
「ガイ…?」

彼の行動の真意が分からず、ジッと見つめてしまう。目の前の彼は、襲い来る快感に身を震わせていた。

「…っあほ、余計なこと…っん…考えんな…っ…」

その言葉に、思わず目を見張る。

粗暴に聞こえたその言葉の裏に、何故だか優しい響きが混じっていて。
暗に、俺は大丈夫だからと。

そう言っているように聞こえたから。

「ガイ…っ…」
「あ、あぁ…っ…」

彼の優しさに改めて救われたような気がして、思わず強く突き上げていた。

「ふふ、今夜は寝かせませんよ…ガイ…」

そう耳元で囁くと、顔を真っ赤にして頷く。
純粋に、幸せだと思えた。







「ガイ、愛しています」

余韻に浸るその体にそっと呟くと、その口元が嬉しそうに吊り上がった。




支えるべき貴方に支えられ、そして守られているその贖罪として、貴方に惜しみ無い愛を捧げよう。
 

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