短・中編

□映える色
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「なるほどな〜」

割り振られた宿の部屋で、向かい合わせでソファに座り、発せられた第一声。

「何がですか?」
「何が、って…ココのことだよ」

あぁ、と一つ頷き、ジェイドは目の前に置かれているカップに手をのばした。

「ここがお前の出身地か…」
「何ですか、その意外そうな声は」

言葉に、多少の笑いを含ませて聞き返される。

「雪って真っ白だからさ〜…雪国の人って純朴な人が多いんだろうな〜とか、勝手に思ってたけど」
(これだもんな…)

チラリとジェイドを一瞥し、肩をガックリと沈みこませる。

「…貴方が何を考えてるか、想像できますよ…」
「はいはいそうですか…旦那には何でもお見通しですよ」

自分はジェイドの考えていることがわからない。
しかし彼はいつも自分の考えていることを見通してしまう。
何となく不公平な気がして、赤い瞳から目をそらした。

「あ〜ぁ…さみぃ…」
「…?暖炉もあって暖かいでしょう?」

気分が沈んでいくのが分かる。

「ちげぇよ…寒くないけど、さみィんだ」
「……」

暖まりたい。心から。
ふ、と目の前が暗くなったと思った途端に、抱き締められる感覚。

伝えたいのに伝わらない気持ちと、伝えたくないのに伝わってしまう気持ちと。

どちらが辛いんだろうか。


「馬鹿な事は考えなくていいんですよ…私にとっての貴方は、私の知っている貴方でしかないんです…愛していますから…」
「アンタ…見た目に似合わず時々クサい事言うよな」

体を離し、顔を見つめる。白い肌。
雪国の人が白いのは、照り返す雪の白さを吸い込んでしまうと誰かが言っていた気がする。
それなら、目の前の男は雪の冷たさすら吸い込んでしまったのだろうか。
白い肌に一際映える、赤の輝き。
先程は見つめることの出来なかった、真紅の瞳。

「綺麗な色だな」
「私の情熱を唯一、外見から表している場所ですから…」

暖かいですよ、と手を取られ、瞼にあてがわされる。

「……本当だ」

暖かい…自然に笑みがこぼれる。当然ながら冷たくなかったことに、僅かな安堵を覚えた。

真紅の瞳を見つめることが出来なかったのは、コイツの中の熱に飲まれることを畏れたから?

抱き締められる暖かな感覚に包まれながら、それも悪くはないかな…と、与えられる熱にそのまま身を預けた。


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