short

□私の世界はそうやって出来た
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「それが契約書なんですね」


怒りを押さえ付けて出てきた言葉がこれなのが情けなかった
他に何か言葉があった筈なのに何も言えなかった



「この色は嫌いか?」


「…え、いや、コントラストな感じで綺麗ですよ?」


「そうか…」


そう言って前髪を下ろした坊ちゃんは再び資料に目を通し始めた


「(嘘しか付けない自分が憎い)」


辛いってのはわかっていたつもりだった
その悪魔に付けられた契約書だって、過去の傷も悪魔の契約も全て知っていて辛いのはわかっているつもりだった

でも、それは薄っぺらいもので本当は身体に受けたその傷一つ一つが過去の惨劇を引き出すものなのに坊ちゃんはそれを隠していた

何故契約書は坊ちゃんの身体に刻まれなくてはならないのだ
全部、過去の傷も悪魔の契約も全て私が受けるのに…坊ちゃんの身体に何一つ残したくないの

貴方の世界は一体誰が壊したの?
あの過去の惨劇?悪魔?
私がもう少し早く、坊ちゃんの世界を知っていたら…そんなことばかり思っていた







(叶うことなら、せめて貴方の瞳を取り戻したかった)


END
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