小説

□佐野君。
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「え、お前彼女いんの?」
「あ?あ〜言ってなかった?」

何となく高校からつるんでて、何となく波長が合ってる様な気がしてて、

「うん、知らない。てゆか何で?」
「何で?ってなに、いたら変か彼女ぐらい」

まぁ大学もコイツとなら楽しいだろうなぁと安易に考えて、今も変わらず仲良く出来るお前は本当に
本当にいい奴だなぁなんて

「いや、だってお前ホモだろ?」
「は!?」

そんな奴に、今更呆れたくはなかったんだけれども。

君は一体何を思ったんだい?佐野君とやら。


「ホモって、何それ、俺が?」
「うん。あれ?違う?」
「………違う」

佐野って、こう突拍子もない事言うよなぁ。
まぁ高校ン時からだけど。

「いやホモだって、絶対!」
「ホモって何でだよ〜俺そんな事言ったかぁ?」
「…いや言ってないけど」
「意味分からん」
「え〜ホモだよお前〜」
「違うって!気持ち悪いなー」

佐野君、僕はね、ちゃんと女の子で、欲情、そう欲情できる、正常な、正常〜〜〜な日本男児なんだよねぇ。残念ながら。
…まぁそれはさておき。

「何でいきなり?どしてだよ」
「……エ〜…」
「いやエ〜じゃないよ佐野君」

「……だって狩野、俺の事好きだろ?」
「ハァ!?」

とりあえず、ア然。
本当、突拍子もないよね佐野君。
そして僕はそんな君が嫌いじゃないよ〜ってそんな話どころではない事ぐらい百も承知。
佐野君、君にはじっくりと色々聞きたいなぁ。

「佐野、待てよ、俺そんな事言った?」
「いや言ってないけど、」
「じゃあ何でだよ!」
「空気だよー」
「は、?」
「空気だよ、く う き !」

僕は意外にも友人には熱い男でね、決めた相手とはいつになってもつるんでしまう男なんだ。
だから佐野君とはいつまでもつるんでたいなぁ〜
な ん て
暢気に言っている場合ではないのは百も承知。あ、二回目。

「いや俺佐野の事好きじゃないよ?俺お前の事抱けないよ?」
「抱くのは俺だろ〜」
「そこじゃなくて!」
「だって高校の時からずっと俺の事見てたじゃんか〜」
「見てたって、そら見る時もあるけど」
「そんでそん時の目が尋常じゃなく可愛かった件〜」
「いや、だから!」
「好きだよ」
「違うって、だからさぁ〜」
「俺が」
「あのね、俺は…………………………え?」
「俺、狩野の事好きになっちゃった」
「…………へ?」
「だからぁ〜付き合お?」

はたして僕の脳は今正常に機能しているだろうか。そして今の言葉は僕の聞き間違いか。いやつい先日、耳掃除をしたばかりだから聞き間違いは有り得ない。ならば脳がおかしいのかと思いきやそうでもないみたい。だって僕は今普通に立っている。特に異常はない様に伺えるし。
さて今おかしいのは僕か佐野君か。とりあえず僕は『佐野君』に一票を入れようか。
答え合わせをしてみよう。
さぁ、僕の運命やいかに!

「抱きたいと思ってンだよね〜狩野のケツを犯したいです!犯していいですか、いや犯させて下さい!犯させて下さいそのケツを!その汚れなき清いお尻を僕に差し出してくれ!さぁ僕にその美しいケツを!」
「…………ごめん、死んでくれる」
「ガビーーン!!」

脳の中で『佐野君』に票が沢山集まっていくよ、やはり僕の脳は正常だ。そんな考え僕にはないし。

「えー!じゃあキスだけでも!」
「てゆうか何で俺だよ!」
「ん〜勘!」
「勘って君!」
「絶対うまくいくよ!狩野君!絶対、うまくいくよ!大事な事なので二回言いました!」
「いきたくねぇようまく!」
「そんな事言うなよ〜!」

僕はケツを掘られて喜ぶホモなマゾヒストでもなければ、異常な性癖を持ち合わしている訳でもない。
ごくごく一般の男児なんだよ佐野君。だから僕をホモ扱いするのはやめないかい?いや是非やめてくれ、君のホモタイムに付き合わされるのはごめんだよ。

「キスだけでいいよ!」
「い や で す」
「ケチ〜!ケチンボ〜!」

さて、ここで問題なのは。
何故僕がここで友達をやめないのか、それは僕が友情に熱い男だからであって、高校からの友人を無くすにしてはそれはそれは惜しい人材ですし。
だから彼女と別れるかと言われたらそういう訳でもないけど。
あ、脳に異常がみられるかもしれないですね、だってまぁコイツならいいか佐野君なら許そうとしている自分がいて、ああ間違いない、僕は脳がおかしいんだ。いやもう脳なんか関係ないむしろどうでもいい、面倒くさいよ全く。しょうがないなぁ、佐野君。今回は僕の脳と僕の諦めの良さに命じて君との交際を考えなくもない。だって実に面倒くさい。彼女?ああいいよ分かった!別れればいいんだろう?まぁその変わり、少しでも僕を楽しませてよ佐野君。

とりあえず、『僕』に一票、かな?



End
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