小説

□好き。――だから。
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「ァアンッ!」
「岸田…きもちい?」
「ゥウアッ…ッ!おか…べ…っ…岡部ぇ…!」
俺は今、岡部という男に抱かれている。
ずっと前から好きで、俺から告ったんだ。
「…おか…べ…ッ!アゥ…!イイよぉっ…!」
「それはよかったよ、岸田」
俺はゲイで、岡部もゲイで。
今までヤッてきた奴らとは違う。
とても気持ちがいい。
それを岡部に伝えると笑ってありがとうと言ってくれた。
「岸田は普通じゃないからねぇ」
「…ッア…な…にが…?」
「ん?今までの奴らとって事だよ」
「…ッ……ンッ…」
――今までの…奴ら…
「岸田は嫉妬深いからね」
「ふつ…う…だろ…っ!」
「そうかな?だって俺がアイツの名前出したら怒るでしょう?」
「…ッ……!」
…『アイツ』…っ…
「ほら、嫌な顔する」
「…ッ…う…るさい!…無駄口叩いてないで…早く…イカせろぉ…!」
「…わかったよ」
「…アッ…!アンッ!ァアアッ!」

…アイツ…か…






「岸田ってこの香水使ってたっけ?」
そう言って岡部が見せてきたのは、最近俺が買い替えた新しい香水だった。
俺はそれを奪う様にして、取り返す。
「…返せよ!」
それをポケットにしまうと、岡部をチラと見てみた。
岡部は俺が見るとニコッと笑い、俺の頭を撫でた。
「ごめんな、岸田」
そして俺を抱きしめた。
いつも俺にやるように。
いつもと変わらない温もりで
――でもアイツと違うのは分かってるよ
俺は、アイツじゃないからね








「おかべぇ…もっ…とぉ…」
「まだするの?」
「ァンゥッ…!…ッおかべぇ…すき…!」
「……そうか」
俺はあの香水をつけた体で、岡部の上で腰を振っていた。
ちょうど騎乗位の体制で俺は一心不乱に腰を振るばかりだ。
「ンフゥッ!イイッ…!おかべぇ…!」
「…ッ…ンクッ…」
目を開けて岡部を見ると、下で岡部は感じているようだった。それを見て俺はホッとした。
「…おかべぇ…ッ!」
すると岡部は俺の腕を掴むと、騎乗位の体制から正常位の体制へと入れ替えられた。
「岡部…?……アッ…アアッ!」
そして腰をグラウンドさせて、俺の奥へと体を捩込んだ。
パンパンと、肌のぶつかり合う音が聞こえる。
「ァアンッ!…ッ…ィイよぉっ!」
俺の腕を拘束し、力の限り捩込んでくる。
しかし、気持ちがよかった。
俺のチンコからはダラダラと情けなく精液が流れ落ちる。
口からは嬌声と一緒に唾液が零れおちたが、それを拭うことは叶わなかった。
「…ヒィッ!…アゥウッ!」
「…ッ…ンッ…」
前立腺を的確に突いてくる腰の動きに頭は着いていかなかった。体ばかりが感じてしまう。
「…ァアッ…ハァッ…」
キモチイイ―――たまんない…!
俺は一緒になって腰を振って、快楽に溺れていた。
岡部も気持ちがいいのか、腰の動きが激しくなっている。
おれも負けじと腰を振っていた。
――しかし
「……っすけ…」
岡部が呼んでいたのは
「…け…すけ…っ…、!」
違う男の名だった。
「けいすけ…ッ……けいすけぇ…っ!」
そう叫びながら、岡部は俺の尻を犯していく。
すごい勢いで俺をガンガン突き上げて、何も考えられない筈なのに、俺の頭は冷めていた。
ただ、体を揺すられる。
「けいすけ…けいすけっ…!」ぁあ、分かってたよ。
それぐらい。
「けいすけぇ…!」
俺じゃない事ぐらい
「ァアッ…ンクッ…け…すけ…」

今まで何をしても感じなかったお前が、あの香水をつけただけでこんなに狂うなんて。
「あ…お…かべ…!」
俺は泣いた。
「ンクッ…!け…すけぇ……!」
今俺の目の前で腰を振っているのに、俺を見ていない岡部に感じて
「ァアッおか…べ…!」
ただ情けなく声を上げながら
「アアアアッ!」
――俺は

泣きじゃくった。










「…ごめん、岸田」
「別に?」
情事が終わった後、俺達はベッドの上に横たわっていた。
岡部は俺の頭を撫でている。
「別に、そんなの分かってるし」
「…でも」
「いいって」
「……」
俺が告ったのは、岡部が好きだったから。でも岡部には、好きなノンケの幼なじみがいた。
俺はそれでもいいと言った。
だから良いんだ。
けいすけが、つけていた香水をつけてみてもけいすけにはなれない。――分かっていたのに。
でも、それでも良いんだよ岡部。
ここで俺が傷つくのがお門違いなのは分かっている。
「…俺じゃないことぐらい知ってるよ」

だからさ岡部。
お願いだから傍にいて
代わりでいいから

――傍にいさせて
    …End
 

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