Long novels
□冷静と情熱と、それから
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宗郷駅から奥路地に入り、道なりに約15分程度歩いたところに新居がある。
新居からすぐ隣には大学だ。
駅から出て、新居までの道なりを確かめながら歩いていく。
このママが書いてくれた手書きの地図。なんか大雑把ね。駅から200M置きずつぐらいの目印になるものしか書かれていない。はぁ。
さっきちらっと見えたが、駅ビルの中には本屋が入っていた。
これから、お世話になるかもね。
その横にはコンビニ。
道なりには同じ大学生が住んでいるのであろう、ワンルームのマンションが何軒か。他にもお肉屋さんやフルーツ屋さん。あ、搾りたてのフルーツジュースも売ってる。
暮らす分には、困ることはなさそう。
1本太い道を、車が過ぎるのを待ってから渡ると、もう新居は目の前だ。
煉瓦模様の4階建の建屋。
「カルチェラタン。ここね」
見る限り、新しくも古くもなさそう。
ちょっと古めかしい感じがするけれど、これも住めば都。慣れてくるのかしら。
ママから預かっていた鍵は302。他にも部屋は空いていたけど、
「302号室って、幸せが訪れることで有名なんですって!今朝占いで言ってたわよ?」
どうして302なんていう微妙な部屋にしたかと聞いた時、こうよく分からない理由ではぐらかされた。
「階段、めんどくさ・・・」
重い荷物を持ってる今、特にだ。
やっとのことで、肩で息をつきながら3階に上がり、ポケットから鍵を差し込み、回す。
「ん、回らない・・・」
何回か差し込み回してみるが、うんともすんとも言わない。
扉をガチャガチャしていると、何故か、中から足音が聞こえる。
「ま、まさか泥棒?」
鞄を抱き抱え身構えると同時、ドアがこちら、外側に向かって開いた。
「え、ちょっ、・・・」
扉に押され、私は重い鞄を持っていたのもあって、後ろに倒れ尻餅をつく。
「どちら様って、え・・・・」
扉から出てきたのは、何か細いものをもった男だった。
言葉が途中で止まったのは、たぶん私のパンツを見たからだ。
膝にかかるぐらいのスカートだが、勢いよく尻餅をつき盛大に捲れていた。
「あ、あの・・・大丈夫?」
この男は、顔を赤らめながら尻餅をついてる私に何も持っていない方の手を差し伸べてきた。
こいつ・・・・
私は手を払い、鞄を脇に置くとゆっくりと立ち上がる。
ゆっくりと息を吐き、一呼吸つく。
いくわよ。
「この・・・、エッチ!バカ!変態!信じらんない!!」
男の頬を平手で打った。