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□愛するということ
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私は今、抱かれている。

「明日香、入れるよ・・・」

「うん・・・」

好きな男に抱かれている。
それは女にとって、この上なく幸せのことだと私は感じる。
その男に全てを見られ、触られ、汚される。
なんと幸せなことではないか。

「んっ・・、あぁ・・・」

好きな男の前で、こんなはしたない声をあげ、ねだり、服従する。

これは、私が望んだもの。

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愛されるということ
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「薫、帰りましょ。」

「うん、行こうか。」

私と薫は並んで同じ教室を出る。
後ろから薫の名前が呼ばれ、振り返ると光がいた。

「渚君、今日も部活に来ないの?もうすぐI・H予選も始まるっていうのに・・・」

「大丈夫だよ。予選ぐらい楽勝さ。さ、行こう。」

薫は私の手を取って前に歩き始める。私は、それについていく。
まるで、どこか私の知らない場所へ連れて行ってくれるかのような錯覚に陥って

「今日も薫の家にいっていい?」

「今日はダメだよ。一昨日来たばかりじゃないか。」

「むうぅー!薫のばか!」

そういって薫の肩を軽くたたく。
自然と笑みがこぼれる。
感じていた、これが幸せなのかと。

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薫と公演前で別れ、家への帰路を行く。
薫と付き合いだして3カ月。いろいろした。
デートにキス、初めても捧げた。

今の私は充実したそのものであり、盲目的だったのかもしれない。

「・・・・・・」

家の前で立ち止まる。
私の家の隣の表札、



前は、あんなにも苦しかったのに。

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「君のことが好きなんだ。付き合ってくれないか?」

部活のあと、薫からはそう告白された。
初めはもちろん断る気でいた。
確かに薫は学校内でも頭一つどころか、二つ飛び抜けてかっこよかったし、陸上も全国有数の実力者。学力も申し分なく、家柄もいい。
まさに絵にかいたような人物だった。

告白されたあと、私はいつも通り真次を引き連れて帰路へとついていた。
いつも通り、他愛もない話しをして、帰った。
いつもとは違う、家の前。

「さっき、渚から告白された。」

「ふーん・・・、って、えぇ!!??」

正直、こうなるのは分かっていた。
真次は絶対に私のことが好き、絶対に。だからこんな反応をする。
そのことが分かっていたからだ。

「で・・・、どうするのさ?」

「あんたはどうしてほしいわけ?」

断ってほしい、そう言ってほしかった。
僕だって明日香のことが好き、そう言ってほしかった。

「・・・・・・・・分かんないよ。」

「なによ!分かんないって!!」

「分かるはずないじゃないか!!僕は僕、明日香は明日香だろ!!」

「もういいっ!!」

パシッ


なんで、こうなるのだろう。


私は次の日、薫の告白をOKした。
そのことはすぐに陸上部内へと知られ、誰もが承知の事実となった。
もちろん、真次も。

それから、ときどき真次の視線を感じ、気づいたが、無視をした。
声をかけてきたのも無視をした。
その度私は得体のしれない快楽に支配され、酔った。

そしてある日、私は真次の存在を感じないことに気がついた。
とっさにグランド内を探した。

真次はグランド内にはいなかった。

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「・・・どこか行くの?」

「・・・友達から呼び出し。帰ってていいよ。」

気だるい感じが心地よかったはずの、この時間。
今は、ただの快楽と嫌悪感、吐き気しか感じることができない。
あのときあったと感じていた感情は、どこへと消えたのだろうか。

「・・・・・・・」

薫からの家の道は、最近一人で歩く。
この道だけじゃない。どの道、も。

「あ・・・・」

前の公園には、休日練習の帰りだろうか、ジャージ姿の真次がベンチに座っていた。

ふと思った。私からは真次は見えるが、真次はまだ私に「気付いて」ないはずだ。
驚かしてやろうか。

ゆっくり公演へと近づいていく。
その時だった。

「碇君!」

私よりも早く、公園に誰か入ってきた。

「待たせちゃったかしら・・・」

「ううん、そんなことないよ。」

そういって真次はそいつに微笑む。
綾波玲衣に。

「あ・・・・」

私は気付く。正面からではなく、ななめ後ろからでも気がつく。
あの微笑みは、かつては自分へと向けられていた。
自分だけに。

「あ・・・、あ・・・・」

その瞬間、自分の中にぽっくりと大きな穴が開いた。
必死に防ごうとする。
自分だけでは防ぎきれない。
ポケットから携帯をだし、薫へとダイアルを回す。

「TRRRRRR、TRRRRRR」

ガチャ

出た!
「あ!かお」

「おかけになった電話は、電波の届かないところにおられるか、電源が入っていないため繋がりません。おかけに・・・・」

手から、携帯が落ちる。
私に残されたのは、なんだろう。

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