おお振りテキスト

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想いを告げることはないのか、と問うと、言わないよと彼は笑った。だって気持ち悪いじゃん男同士なのに。そうやって自嘲するような彼に何故だか無性に苛立ってしまった。

「気持ち悪くなんてないでしょ」
「男か女かなんて所詮二分の一の確率でしかないし」
「性別を確認してから好きになるわけじゃないよね」

厳しい口調は不可抗力。彼は呆気にとられた顔をしてから、しのーか頭いいのなあ、と笑う。いつも宿題見せてあげてるのは誰だと思ってるの。無理矢理誤魔化すように笑った。

「水谷ー!1組の奴が呼んでる、多分野球部じゃね?」

ハッと振り返る彼に苦笑して、早く行ってきなよ、と言う。彼は少し申し訳なさそうな顔をしたけど、うん、と言って教室の外に出ようとした。彼の後ろ姿にどうしようもないくらいの憎悪と愛情を感じた。ぐちゃぐちゃだ。

「しのーか、」
「ありがとう」

振り返って彼は笑う。

「でも俺は言わないよ」
「俺の気持ちをあいつが受け入れるかどうかも二分の一の確率だから」

そんな危険な賭けをして、今を失いたくないんだ。そう言う彼の顔はあの時みたいな泣きそうな笑顔だった。そうだ、全部二分の一の確率だったんだ。彼があの人を好きになるのも。私が彼を好きになるのも。

(だとしたら、どうして、)

廊下から彼の笑い声が聞こえた。教室の喧騒の波をかきわけて耳に入ってくるその声は私の胸を締め付けた。






















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(どうしてこんなに苦しい方に転んでしまうのだろう)


























狼少女シリーズ第2弾。二分の一って高い確率に見えて実はそうでもないというか、好きという想いが強いほどそうでなくなるというか。水谷はたまに鋭い。




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