和さんは優しくて頼りになる。信頼できる。和さんは俺をエースにしてくれた。だから好きだ。だから嫌われたくない。だから俺は和さんの前では、理想のエースを演じる。演じきれてるかはわからないけど。 利央はバカで可愛い。俺を頼ってくれる。準さん好き、と笑顔でいってくれる。だから好きだ。だから嫌われたくない。だから俺は利央の前では理想の先輩を演じる。これも演じきれてるかはわからないけど。 二人とも好きで大切だ。だけど二人といると、たまにひどく息苦しい。それは俺が、俺じゃない誰かを演じようとする時だ。でも本当の俺ってなんなんだろう。和さんや利央の前にいる俺だって、マウンドにのぼるエースの俺だって、本当の俺のはずなのに。てゆうか俺ってなんだ? 延々止まらない思考にまたか、と頭の隅で思う。気持ち悪くなってきた、いつもと同じだ。 「しんご、さん」 「なに、どーした?」 「気持ち悪い」 「吐くか?」 隣にいるこの人のことを俺は特に好きではないと思う。じゃあ何で一緒にいるんだ。それはこの人には気を遣わなくていいから。それだけか、と聞かれたらそれだけではないけど、最大の理由はそれだ。 「ここで吐いてもいい?」 慎吾さんにしがみつきながら言うと、少しの間があってから、準太ならいいかなと言われた。変態。この人は俺のことを心底好きなんだろう。 |