人間の身体のパーツひとつひとつにもうひとつずつスペアみたいなものがあって、何度もなんていうのは都合が良すぎるから、せめて一生に一度だけでいいから交換がきくようなシステムがどっかにないだろうか。なんて。超現実主義者、リアリストな俺の恋人が珍しく独り言のように呟いた、らしくないと思いながら恋人を振り返ると、その視線は俺の右腕、曲がった右腕、使い物にならない右腕をまっすぐに見つめていた。ああ、なるほど。そういう話か。酔狂な話だ。 「そんなシステムがあったら俺は」 「この脳みそを交換して、」 「野球をやってた記憶を」 「抹消する方を選ぶかもなあ」 ニコリと微笑む俺とは対照的に、涙を浮かべる君の目はきれいだ。ごめんごめん。いじめすぎたかな。 「でも脳みそを取り替えて」 「記憶をなくしたとしても」 「俺は俺だからまた野球を好きになって」 「こんな曲がった腕で」 「また球を投げ始めるかもな」 「何もしらずに」 そう言って頭を撫でてやれば、ごめん、と呟きながらしがみついた。俺より幾分小さな背中を撫でる手は、もうあの場所で球を投げることのない右腕だった。なるほど。使い道はここにあったのか。 オーダーメイド (記憶がなくなったら俺のことも忘れるだろ?) (でも俺は俺だから、また泉を好きになるよ) 泉は浜田以上に浜田の右腕に執着しているかもしれない浜田は野球が好きだからこそ自分の腕に見切りをつけてしまったのかもしれない、という話 song by RADWIMPS _ |