私、男子テニス部のマネージャーになりました!
登校ギャグ
「れいな、おはようさん!」
「忍足さんに白石さん、おはようございます」
この間、光くんが白石さんと話してくれてマネージャーになることができた。でも今日は朝練なし。一人のんびりと登校していたら、自転車に乗っている忍足さんと何故か野球のユニフォームを来て歩いている白石さんに声をかけられた。しかも様になってるし。
「れいなちゃん、今日はユウジと一緒じゃないん?」
「お兄ちゃんは小春さんとネタ合わせがあるみたいで先に行きました」
「なるほどな。あいつらもよぅやるわ」
苦笑いする白石さん。私からユニフォームの話題に触れてほしいのか、自分からはユニフォームについて何も言ってくれなかった。
「…あの、白石さんは何で野球のユニフォームを着てるんですか?」
試しに触れてみると、待っていましたといわんばかりに満面の笑みを浮かべる白石さん。
「今に分かるで。…そうや、れいなちゃんにもお笑い魂教えたるわ」
そう言ったかと思うと、白石さんは忍足さんに目で合図した。それだけで伝わったのか、忍足さんはまるでおもしろいものを見つけた子供のようにニヤニヤしていた。なんか嫌な予感。
「れいな、ここ座って俺にしがみついとき」
指で自転車の荷台を指差す忍足さん。
「でも、校門は目の前…」
「えぇからえぇから」
言われたとおりにゆっくりと荷台にまたがり、忍足さんに腕を回す。しがみつけって言ったのは忍足さんなのに、忍足さんは顔を真っ赤にして「ほ、ほな、い、行くで!」と恥ずかしがっていた。
「浪速のスピードスターの力、見せたるわ!」
「うわっ…!」
物凄い勢いで校門に向かってこぎだす忍足さん。落ちる落ちる落ちるー!
「お、忍足さん!段差!段差!」
校門には少しの段差があって、このまま行けば自転車がつまずいて私も忍足さんも落下するのは明らか。それなのに一向にスピードを落とす素振りを見せない忍足さん。
「行くでー!」
「きゃーっ!」
ドン、という衝撃と共に私達の体が宙を舞う。衝撃で忍足さんから離れてしまった。
「あとは任せたでー、白石ー!」
「オーケー!まかせとき!」
急なことに頭が着いていかず、受け身もとれないままぎゅっと目をつむって衝撃に備える。でも予想していた痛みはなく、しばらくして誰かに受けとめられていることがわかった。
「んんーっ、我ながらエクスタシーなスライディングや」
その声にそっと目を開けると、至近距離に白石さんの顔。どうやら白石さんがスライディングで助けてくれたらしい。私達のやりとりを見ていた生徒達から拍手が沸き起こる。
「れいなちゃん、無事?」
顔と顔がくっつくんじゃないかと思うくらいの距離で微笑む白石さん。熱が物凄い勢いで顔に集まる。
「だ、大丈夫、です…」
私がそう言うと「よかったわー」と言って私を立たせてくれた。
「顔真っ赤やで?かわえぇやっちゃな」
クスクスと笑う白石さんに、余計に顔が赤くなる。それをごまかすようにちらっと忍足さんを見ると、顔面から着地したらしく痛さのあまりピクピクしていた。…お笑いって命懸けなんだな。
(20100422)