次々に独自のお笑いを披露していく出演者。とうとう次がラスト。お兄ちゃんの番がきた。
新入生歓迎お笑い祭
お兄ちゃんが出てくると物凄い歓声が体育館に響いた。
「ユウジ先輩、人気者やな」
そういう光くんも、お兄ちゃんのモノマネを楽しみにしているようだった。ステージの真ん中に立つお兄ちゃんに、忍足さんが「れいなが見てるで!」と声をかけると、あからさまに嫌な顔をされた(お兄ちゃんひどっ!)。
「1年生のみなさん、入学おめでとう。この学校はお笑いなしでは生きていかれへんで。四天宝寺のお笑い魂、その目に焼き付けとき!」
びしっと館内を指さすお兄ちゃんに、館内の歓声はますますヒートアップ。その勢いにのり、お兄ちゃんは先生のモノマネを始めた。物凄く似ているらしく、館内から笑いの声が絶えなかった。もちろん、私もお腹が痛くなるくらい笑った。このようなステージでお兄ちゃんのモノマネを見るのは初めてで、いつものお兄ちゃんとは違う一面を見ることが出来た。
「次に、俺ら男子テニス部のエクスタ部長から部活紹介やれ言われとるからやるで」
隣で白石さんが「エクスタ部長て何やねん」と苦笑いしていたけど、そんなことお構いなしにお兄ちゃんのモノマネは始まった。レギュラー陣のモノマネをしているようで、「エクスタシー!」「NO SPEED、NO LIFE」「まぁ、しゃーないッスわ」と、それぞれの口癖を紹介していた(私はその口癖を聞いたことはなかったけど、声がそっくりだったから誰だかすぐに分かった)。隣で忍足さんが「なんや自分に似すぎてて気持ち悪いわー…」と呟いていたのにも納得ができる。
しばらくして部活紹介が終わり、クライマックスにさしかかった。次は何のモノマネだろうと思ったら、お兄ちゃんは急に真面目な雰囲気になった。
「最後に、この場を借りて言いたいことがあるんや」
館内が静まり返る。
「東京に住んでいた俺の妹が大阪に帰ってきた。ずっと離れとって、お兄ちゃんらしいことなんて少しもできひんかった。だからこれからは、力になってやりたいと思うねん。まだまだ大阪での生活になれとらんみたいやし、みんなも仲良うしたってくれ。一氏ユウジ、最高のお兄ちゃんになること、ここに宣言するで!」
そう言ったとき、ステージ上のお兄ちゃんと目が合った。でもそれは一瞬で、お兄ちゃんはすぐに恥ずかしそうに視線をそらしてしまった。
「ユウジー、よく言った!ものごっつ男前やでー!拍手や、拍手ー!」
静まり返った館内に忍足さんの声と拍手が響く。それにつられ、館内から次々と拍手が起こった。呆然とステージを見ていると、「お兄ちゃん、かっこええやん」と白石さんが微笑みかけてくれた。
「ほ、ほな、気が向いたらモノマネライブにも来てな!」
そう言い残し、お兄ちゃんはステージを降りた。その後もしばらく拍手は鳴りやまず、まるでお兄ちゃんと私の再会を祝福してくれているかのようだった。
(20100408)