人生愛したもん勝ちや!

□21
1ページ/1ページ

(ユウジside)

「れいなちゃん!」

近くにいた白石が慌ててれいなを水の中から助けだした。


子供じゃないもん


「大丈夫か?」

「ゴホッ……はぁ…はぁ……だいじょうぶ、です……」

怖かったのか、白石にギュッと抱きついとるれいな。白石はれいなの背中を撫でて落ち着かせていた。

「ユウジ、れいなちゃんにジャージ貸してやり。着替えたら風邪引かないうちに帰らせてやって。金ちゃんには俺からお仕置きしといたるわ」

「おん。すまんな」

「ええよ。金ちゃんには毒手しか効かんからなぁ」

白石と目が合ってビクッと肩を揺らす金ちゃん。事故とはいえ悪いことしたで、金ちゃん。

「金ちゃん、お仕置きや。覚悟しぃや…」

「毒手!?まだ死にとうないんや、勘弁してぇな!」

「あかん、許さん」

白石が逃げようとする金ちゃんの腕を掴む。れいなは白石から離れ、俺のところに来た。

「れいな、行くで」

「うん」

れいなをプールサイドに上がらせ、服の水を絞らせる。見事に水浸しや。俺はバッグからジャージを取り出し、れいなに渡した。

「暑いかもしれんけど、あいにく長ジャージしかないんや。これで我慢しぃ」

「うん、ありがと」

「着替え終わったらチャリ置き場で待ち合わせな」

「はーい」

更衣室へ向かい、ささっと着替え、俺はチャリ置き場へと向かった。



「お兄ちゃん、おまたせ」

「おー。めちゃくちゃ待ったわ」

「女の子にそんなこと言ってると彼女できないよ」

「やかましいわ。第一、お前女の子か?」

「失礼な。弟だと思ってたの?」

「ガキ」

「バーカ」

「…置いてくで」

「ごめんなさい」

全く、腹立つやつやな。こんなんやったら小春といたかったわ。

「そいえばお兄ちゃん、今日はチャリで来たんだったね。寝坊したから」

「そや。乗せてやるんやから、寝坊したお兄ちゃんに感謝しぃや」

自転車に跨り、れいなを後ろに乗せて漕ぎ始める。あー、軽い。こういうときに、こいつは女の子やって感じるんや。

「よく『うわーん!お兄ちゃーん、水怖いよー!』って泣かんかったな」

「…何年前の話よ」

「さぁな。今でも水は得意やなさそうやな」

「その通りです」

こいつがまだ大阪にいた頃、市営プールで泣き出したれいなにめちゃくちゃ困ったのを思い出したわ。ほんま、面倒くさかった。

「でも前よりは大丈夫だよ」

「どうだかな」

「もう子供じゃないもん」

「へーへー」

適当に返事をしたら背中を指で突かれた。春に久しぶりにこいつに会ったとき、前会ったときよりも随分と大人びていたのは俺も感じていた。言葉使いが綺麗になって、お洒落もするようになって、華奢なかんじがして…。ちっこいガキやと思ってたのにな。

「…いつの間にか女になったんやな」

「なんか言った?」

「言っとらん」

ボソッと呟いた俺の顔を覗き込むように、れいなが顔を寄せた。まだ乾いていないれいなの髪が、俺の頬に触れてくすぐったかった。



(20101128)







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ