♪Story♪

□ル・ベベ
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 中学の時から通い慣れたアパートの一室。殺風景で家具らしい家具は小さなテーブルと箪笥一つくらいしかなかった小さな部屋は年月が経つに連れて少しずつ物が増えていった。
手始めに自分用の食器を始め、洗面道具にパジャマを含めた着替え、高校を過ぎる頃には趣味の調理道具一式や家具まで持ち込んで来た。
狭いアパートの部屋で、半同棲生活を続けて数年が経つ。
 朝、これだけは何年経っても増える事がない布団の中で限は身じろぐ。
覚醒が近いのか、無意識になってもいない目覚まし時計に手を延ばし、それに手が触れると瞼が静かに開いた。
 「……ん、まだ七時前か……」
まだ睡眠時間があるのがわかると、限はまたもそもそと布団の中に潜り込む。何時もは寝起きはいいので、一度目が覚めたらすぐ布団から抜け出す。しかし今日はそうもいかない。
昨夜の情事の相手が、良守がまだ布団の中にいる。昨夜はアパートに来てからそのまま泊まっていった良守は、情事をしてもしなくても限と一緒の布団の中で寝る。
朝の弱い恋人は、一緒に朝を迎え目が覚めた時に限がいないとひどく淋しがる。


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