♪Story♪

□偶然の産物
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 そこを見つけたのはほんの偶然。
近所の公園の一角にある古ぼけたバスケットコート。ゴールも一カ所しか付いておらず、地面に描かれたラインもほとんど消えかかっている。
 良守は学校の鞄をそこらに放ると、無造作に放置されたバスケットボールを拾い上げた。古びたボールはどこかの子供の忘れ物らしく、かすれた油性マジックで何か名前らしい物が書かれている。
コンクリートの地面に落としてみると、空気の張った音と共にまた良守の手元に戻ってくる。
 片手をボールの上に突き出し、連続して手の平で叩くとバスケットボール独特のゴムの中で空気が弾けるような音が響いた。
 「なあ志々尾。ダンクシュート、出来る?」
良守は一緒に此処を見つけ、今は良守が放り出したディバックを拾い上げて肩に提げながら隣に来た限に笑いきく。
「……何でだ?」
短くきき返す限に、良守はボールを一度両手で抱え、狙いを定めて一カ所しか付いていないゴールに向けてそれを投げ付ける。
ボールは弧を描きながらゴールに飛ぶがリンクに当たり、リンクが軋んだ音を立てながらまた良守の足元に転がり落ちて来た。
「あぁッ、失敗した。やっぱ俺狙い定めるの苦手だな。……でさ、ダンクシュート出来んの、出来ないの?」
「……。…出来る」
実際にはした事はないが、自分の脚力を考えれば対した事ではないだろうと思い、限は短く答えた。
 「お。マジ?中学生で出来るの珍しい」
「……お前だって、出来るんだろう?あれだけ夜、学校中跳び回っていて出来ないわけないだろう?」
良守は転がって来たボールを拾い上げ、限に向かって振り返り笑いながら答える。
「高さは間に合うけどさ、狙い定めるの苦手って言っただろ。ボールより先に俺がゴールの板とかにぶつかってゴールできない。…な、志々尾。ダンク決めて」


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