♪Another Story♪

□子供の記憶
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 それは些細なきっかけで始まった。
 「バッツって年齢の割りに純粋だよな」
離れた所でオニオンをからかって遊んでいるバッツを見て、ポツリとジタンは漏らす。
ジタンの言葉に釣られ、その光景を見たスコールも苦笑混じりに頷く。
「確かに。二十歳には見えないな」
バッツは歳の割りに確かに純粋めいた物が溢れている。
 決して子供っぽいという意味合いではなく、大人特有の陰りらしいものが見えないという意味だ。
同じ歳のはずのセシルや、一つしか違わないクラウドとはまるで違う。
 「バッツみたいな人間って、子供の頃からそのまま心が成長してきたのかな?」
「どうだろうな。…その人間の生き様次第だろう」
少年特有の明るい笑みを浮かべ、オニオンの頭をぐしゃぐしゃに撫でまくるバッツに不思議な感覚を覚え、二人はバッツを見つめた。
 バッツはそんな二人の視線に気づき、オニオンの背中を軽く叩いて別れを告げてから、手を振りながらこちらに駆け寄ってきた。
「なんだ二人共。俺に熱い視線送っちゃって」
ニカリ、とバッツは歯を見せて笑う。
 バッツらしい仕種に二人も釣られるように手を振り返し、笑みを浮かべた。
「いや、ただ、バッツって子供の頃どんな子供だったんだろうって思っただけ」
「俺が子供の頃?」
 ジタンの言葉にバッツは不思議そうな表情を浮かべたが、それほど深くは考えなかったのかすぐに答えた。
「いつも友達と遊んでたな。おふくろが死んでからはずっと親父と一緒に旅して、たまに故郷に帰ってまた友達と遊ぶの繰り返しだ」
「…意外に普通だな」
バッツの事だからと、もっと破天荒な事を考えていたスコールが思わず呟くと、バッツは明るく笑う。
「普通だぜ。人間それが一番だろ」
スコールの言葉にバッツは腰に手を当て朗らかに笑い、少し逡巡すると言葉を続ける。
「子供の頃ので面白い事とかなら…、友達と隠れんぼして、屋根に隠れた俺を誰も見つけてくれなくて、それでも隠れ続けてた俺を夜中になってようやく親父に見つけてもらった事とかあるけどな。スコールが考えてた感じのはこんなのか?」
「……。まあ、確かにバッツらしいが…。隠れ続けた意味あるのか、それは」
「ん。楽しかった!」
呆れたように言うスコールにバッツはやはり明るく笑みを浮かべて答える。
が、直ぐに照れたように表情を変え、頬を掻く。
「けど、途中で高いのが恐くなって足を滑らせて、屋根から落ちかけてたのを親父に見つけてもらったってのが本当」
だから今でもトラウマで高所恐怖症と小さく続けたバッツにジタンが驚きで目を大きく見開いた。


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