♪2nd Story♪

□きずな
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 「とーしゃ、いたい?」
「ん?」
「…ぃた?」
「快まで…。一体何がだ?」
一緒に風呂に入ろうとせがまれ、快を膝の上に抱えて風呂に入っていると誠は向かい側に湯舟に浸かりながら首を傾げて訊く。
 確かに今日は夜行の任務で妖を狩りに行っていたが、任務中に負った怪我は妖混じりの限の身体は傷痕が残らない程に完治している。
目立つ傷ないよな、と限は怪訝に思う。
 「……ぉなか」
「腹?」
快は膝の上でくるりと限に向き合うと、限の腹に手を伸ばす。
湯の中で小さな手が限の身体を探り、少しくすぐったいような感触が伝わる。限の引き締まって僅かに盛り上がりをみせる腹筋の筋を快は探り、脇腹から腹部にかけてゆっくりと労るようにに手が撫でるように動き、途中でぴたりと動きを止めた。
「ぃた?ぃた…?」
自分に良く似た快の顔がしょんぼりと元気のない表情を浮かべる。
 快の手が触れた場所に浮かび上がる物は炎縄印。入れ墨のようにも見えるそれは間違いなく自分の為にかけられた呪い。
 「…とーしゃ、いたそう。あのね、今日、とーしゃ帰ってきた時、なんかいたそうだったから、せーもかいもしんぱいだったの」
「…う。ぱぁぱ、ぃたなの…。まぁまは、げーき、なぃ」
子供達の鋭い観察眼に限は目を丸くした。
 今日の任務は大掛かりな狩りで、人手がどうしても足りずに同じ異能者である良守にも手伝ってもらっていた。
子供達は修史にあずかってもらい、夜行のメンバーに混じって良守も結界師としてその力を奮っていた。
 大量に神裕地に集まった妖を退治するのが、今回の任務だった。
攻撃的な能力を持つ限は前線に立ち、妖を次々切り裂いていた。良守も結界で妖を滅しながら仲間を守る為に後方に居たにも関わらず、前線に出過ぎてしまった。前線にいたメンバーの中で攻撃力が低めな位置に良守は無意識に立ってしまったのだ。その所為で良守が集中的に狙われてしまい、咄嗟に結界が張るのが遅れた良守を庇った。
 妖の数が多すぎるのと、良守が傷付きそうになった事に、思わず限は怒りで身体の大半を変化させてしまったのだ。
 自らが確実に意志を持って変化したわけではなく、我を忘れて変化するのは、制御出来るようになった今でも危険なものだった。
 炎縄印が与えてくる痛みなど、その時は感じなかった。ただただ、早く狩りを終わらせて良守を安全な我が家に帰したかった。護りたくて、傷付けたくなくてその後も良守を庇いながら戦い続けた。
怒りで制御の出来ない完全変化をしそうになっても、近くで良守が自分の名前を叫ぶように呼んでくれたお陰で自我がなくなる程の変化はなかったが、焼きちぎられるような壮絶な炎縄印の痛みは任務が終わると同時に我が身に襲い掛かって来た。


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