♪2nd Story♪

□あわあわ
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 「ほら、快ばんざーい」
「ばんざぁッ」
素直に両腕をあげる快の衣服を良守は微笑みながらゆっくりと脱がせる。
その横では誠も急々と一人で服を脱いでいる。
子供達が衣服を脱ぎ終えると、良守も素早く衣服を脱ぎ、まだ幼い快を抱き抱え、誠を促して浴室に入った。ふんわりと温かい湿度のお陰で肌寒さは感じない。
 「よぉし、風呂に入ったら最初に何するんだ?」
抱き抱えた快を一度簀の子の上に下ろし、子供達にクイズをしているように問うと、二人は手を上げて答えた。
「かけゆ!」
「ばしゃばしゃかけー」
「正解、じゃ、かけろッ」
良守は手桶を二人に手渡すと、二人はキャッキャッと笑いながら湯舟から湯を汲み取り身体にかけていく。
多少豪快なかけ方だが、大目に見てあげる。
 良守もかけ湯をし、また快を抱き抱えて湯舟に入ると、誠も一緒に湯舟によじ登り一緒に浸かる。
 温かく心地良い湯温に、子供達は気持ち良さそうにはふ、と息を吐く。
 誠は湯舟の底に座っても顔は出るが、快は鼻まで沈んでしまう。良守の足に腰掛けるようにして座るとちょうど肩まで湯舟に浸かる状態になる。
 「まぁまッ、あわあわ、あわぁー。ちょこ、あまぁいあわあわー」
快はぱしゃぱしゃとお湯を飛ばしながら良守を見上げて笑う。
舌ッ足らずの快の言葉を、流石に二人も子供を産んで育てている良守は理解し、笑い返しながら頷いた。
「快は楽しみにしてたもんなぁ。じゃあちょっと誠につかまってろよ。今入れるから」
「うッ」
快は良守から誠に泳ぐように移動し、誠も湯舟で立ち上がると両手を広げて快を抱きしめる。
誠の体格だとまだ小さく、誠の足に快が座っても顔が出ないのだ。
 二人共湯舟の中で立って良守の動きを期待の眼差しで見つめ、良守は前もってすでに浴室の中に準備していたそれを掴み上げた。
 小さな瓶に入ったそれは甘いチョコレートの香りの入浴剤。それも泡風呂の入浴剤だ。
 「かーしゃ、ちゃんとあわぶろになるかなぁ?」
「なるって。お店の人もオススメですって言ってただろ。オススメだったら絶対泡立ち良いから大丈夫」
「まぁまはゃーッ、あわあわッ」
「わかったわかった。快、暴れると誠が大変だから大人しく待ってろな」
 苦笑しながら良守が蓋を開け、裏書に書いてある一回分の量を湯舟に入れる。ほのかに香ったチョコレートの香りに誠と快は笑いながらばしゃばしゃと手を動かして泡立たせようとするが、泡は僅かにしか浮かばない。
二人は向きになってなおいっそう手を動かすが、それでもなかなか泡立たなかった。
 子供達の必死な動きに笑いながら良守はシャワーを取ると、ジャグジー代わりに湯舟に勢い良くシャワーを注いだ。
 早く、細かなシャワーの波紋によって湯舟の中はみるみるうちにきめ細かな真っ白な泡が立ち、それまでほのかな香りだったものが濃厚なチョコレートの香りに変わった。
顔近くにまで泡立った入浴剤に、子供達は目をキラキラさせながらキャーッと楽しげな声を上げた。


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