♪2nd Story♪

□湯煙心
1ページ/3ページ


 独特の響く音が広がる空間。
暑いと思う温度とそれをともなう湿度。しかし、それに不快感は一切ない。
 髪も体も洗い終え、肩に掛かる髪が湯舟に落ちないようにヘアバンドで上げた閃はふぅと心地良く息を吐き出す。
 自分は直接戦闘に参加はしないが、やはり任務の後は疲れが出てゆっくりと湯舟に浸かるのは気持ちが良い。
しかも今夜は支部の小さな湯舟ではなく、近所の二十四時間営業の銭湯で足を伸ばしても延ばし足りない程の広い湯舟で、烏森の仕事を終えた明け方近い時間帯ていう事で人影もない。気持ち良さも倍増だ。
 「−影宮ぁッ!ちょっと避けてぇッ」
「へ?わぁッ!?」
まだ体を洗っていたはずの良守の声が響き、振り返ると良守が楽しそうに笑いながら湯舟に飛び込んで来た。
バシャンと飛沫が上がり、辺りに飛び散り自分にもかかる。
 「あは、ごめん。でも一回やりたかったんだ」
マナー違反をした事に良守は謝るが、自分達以外に他の客もいない所為か悪びれた様子もない。
 ニシシと笑う良守に対し、閃は掛かった飛沫を拭いながら目を吊り上げる。
「ゴメン言うくらいならやんなバカッ!」
爪を伸ばし軽く良守の額に突き出すと、良守は驚いたように悲鳴を上げて額を押さえてうずくまる。
 「いってぇ〜…。だ、だって、今客俺と影宮しかいねぇしさ、やるなら今しかねぇじゃん」
「だからって飛び込むなッ。…ったく、ガキ」
閃は腕を組み怒りながら言うが、良守は閃が腕を組んだ事により際立った閃の身体的特徴に目を奪われ、小言は耳から抜けていく。
 「……影宮、サイズなんぼ?」
「は?んだよ、いきなり」
「だって!同じ十四なのにありえねぇよこのデカさ!」
 むにゅッ、と良守は閃の胸を両手で押しながら信じられないというような表情で閃の胸を凝視する。
両手で押しているのに、閃の胸は隠れる事無く、程よい弾力を良守の手に伝えてくる。
「ぅ、うわぁッ!?な、なに鷲掴みしてんだッ!」
閃は真っ赤になりながら良守の手を振り払うと慌てて胸を隠して怒鳴る。
「だってさ!影宮の胸マジデカイ!時音よりデカイんじゃないかッ!?サイズどれくらいなんだよ!?」
「あーもう、うっせえなぁッ!DだよD!」
興奮したのか早口でまくし立てる良守に羞恥で顔を赤くしながら、閃は早くこの話を終わらせようと白状する。が、良守は閃のサイズを聞いて目を丸くしてまた早口でまくし立てた。
「Dカップ!?十四歳で有り得ないだろ!Cなら許せるけどDは許せねぇ!」
「何だよその基準ッ?それに関係ないだろッ、好きでこのサイズになったんじゃねぇし」
「うっわ!何だよその言い方!俺なんて小さくて悩んでんのにッ」
「良守はBくらいだろッ、平均でいいじゃねぇか」
「良くないッ!アンダーが小さいからAとかでもピッタリな奴あるから悩んでんの!何食ったらそんなデカくなんだ!?あ、もしかして夜行に入ればデカくなるのか!?夜行に居る女の人みんな胸でかいし、スタイル良いし!」
「副長や亜十羅さんは特別スタイル良いだけだろ。知らねぇよそんなの。…それにな、胸デカイってのも悩みなんだぞ。肩凝るし、走れば胸揺れて痛いし、暑い日はあせも出来やすいし、下着買いに行っても可愛いの少ないし」


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ