♪2nd Story♪

□おるすばんびより
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 「ドラレンジャ〜ッ、ドラッレンジャ〜ッ♪ゆーきのせんーしたーちよぉ♪」
「…にぃに、うしゃい。も、はじまりゅ」
ビデオを付け、オープニングテーマが流れると同時に楽しげに一緒に歌い出した誠を快がジト目で諌める。慌てて誠が口を閉じるのを見て、快は満足そうに息を吐いてまたテレビを見つめる。
 孫達が集中してテレビを見ている間、修史は手早く炒飯と添え物のスープを作り、皿と子供用のマグカップによそう。
「誠、快。今日は特別にテレビ観ながらご飯食べていいよ。今日はお義父さんいないからね。秘密だよ?」
躾に厳しい繁守がいないので、修史は孫達を甘やかす事にした。
二人は満面の笑みで笑い声をあげながら修史に礼を言いながら昼ご飯に手を延ばした。
 幸せそうに食事をする孫達の面倒をみながら修史も食事を始める。
「快、玉ねぎちゃんと食べなさい」
「……や。きらぃ」
「ちゃんと食べないと限君みたいに大きくなれないよ?」
「……や」
「そーだよかい。とーしゃみたいにおっきくなれないんだよ?」
「誠も椎茸食べなさい」
「……あい」
「うん、いい子だね。ほら快。お兄ちゃんも嫌いな物食べてるよ?快も頑張って食べようね」
「……う」
目をぎゅっと閉じながら嫌いな食べ物を口に運ぶ孫達を褒めていると、電話のベルがけたたましく鳴り響いた。
修史が電話を取りに背を向けた瞬間、誠と快は急いで違いの嫌いな物を交換しはじめた。お互い、相手の嫌いな物は食べられるので、交換して食べようと兄弟独特の無言の意思疎通が行われていた。
 「はい、もしもし。…あ、町内会長さん。どうしました?……はい、はい。…え!?」
電話の相手は老人会の会長でもある町内会長だった。老人会の旅行に行っていた繁守がギックリ腰になってしまったので迎えにきてほしいという電話に修史は慌てる。
「わかりました!すぐに迎えに行きますので…。はい、すいません、お世話かけます」
電話を慌てて切り、そこではっと修史は気付いた。
「しまった!誠と快どうしよう!?まだ二人だけで留守番なんて出来るわけないし…あぁ、まだ小さいから雪村さん所に預けるわけにはいかないだろうし、かといって連れてくのは…」
 修史が頭を抱えると同時に、玄関の戸がカラカラと音を立てて開いた。
「ただいま。休み取れたから久しぶりに帰って来たよ。…どうしたの父さん?」
荷物を抱える、ニコニコと笑いながら玄関をくぐってきた長男、正守の姿に、修史は目を輝かせた。
「正守!いいところに帰ってきてくれたね!」
「な、何?どうしたの?」
「お義父さんがギックリ腰になっちゃって迎えにいかないといけないんだよ。だから、しばらく誠と快の面倒見ててくれるかい?良守は限君と一緒に出掛けてるし、利守は学校にいってるから」
「あぁ。そうゆう事。いいよ、二人はちゃんと見てるから、お祖父さん迎えにいってきなよ」
「ありがとう!じゃあよろしく頼むね!」
修史はそう叫ぶと、慌てて財布だけ持って家から飛び出して行った。
 慌ただしい様子に正守は苦笑を浮かべながら、テレビの音が聞こえてくる居間の戸を開けた。
「誠、快。何見てるんだ?正守伯父さんだよ」
戸を開けて最初に見た光景は、違いの嫌いな物を交換しながら口にいれていた瞬間で、ヤバイ。という表情を浮かべた甥っ子二人の姿だった。


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