♪2nd Story♪

□おるすばんびより
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 今日の良守はいつもと違った。滅多にしない化粧をきちんとして、いつもは動きづらいからと言って穿かないスカートを穿いている。可愛いオフホワイトのワンピースを上機嫌に翻しながら着々と出掛ける準備をする母を見て、誠はニコニコと笑いながら、快は寂しそうに顔を曇らせながら言う。
「かーしゃ!どこまで行くの?」
「…かいもいきたい」
「ん〜ちょっと遠くまで。快はお兄ちゃんと留守番な?」
「かい、せーとじいちゃといっしょにおるす番。とーしゃとやくそくしたでしょ?」
「…う。……はやく、かえってきてね?」
すっかりお兄ちゃんらしくなった誠が快を諌めると、快は渋々という感じで頷き、良守を見上げてつぶやいた。
「うん、なるべく早く帰って来るから、快。お兄ちゃんと父さんの言う事聞くんだぞ」
「……う」
まだ二歳になったばかりの末の子はまだ甘えたい盛りなのは良くわかっているのだが、流石に今日は限と二人で過ごしたいと思った良守はすまなそうに快の頭を撫でながら微笑んだ。
「ありがと。…じゃあ、いい子にしてたら母さん、お土産買ってくるからな」
「ホント!?」
「おーやげ!?」
お土産という単語に二人は目をキラキラとさせながら満面の笑みを浮かべた。
「うん。お土産。何がいい?誠と快の好きなお菓子でいいかな?誠は月影堂のバナナ大福で、快はプチフレーズのベリータルトでいいか?」
それぞれ息子達の好きな和菓子屋とケーキ屋の菓子の名を言うと、二人は大きく頷いた。
「あい!せー、それが良い!」
「かいもッ!かいもぉッ!」
「うん、じゃあそれ買ってくるな」
 良守の言葉に二人は嬉しそうに顔に満面の笑みを浮かべた。
 「良守、そろそろ行かないと上映時間に間に合わないぞ」
車を家の前に回してきた限が部屋の戸を開けながら良守に呼び掛けると、良守は嬉し気に微笑みながら頷く。
「わかった。じゃあ誠、快、いい子にしてろよ?」
「夕方までには戻るから、じいちゃん困らせるなよ?今日は大きなじいちゃんも利守もいないから、じいちゃんの言う事聞けよ?」
「あい!いってらっしゃーい!」
「ぃらーしゃい!」
限の言葉に二人は大きく頷き、両親を玄関まで見送った。
 「父さん、二人の事、頼むね。夕方までには戻ってくるからさ」
出掛ける気配を察した修史が玄関に顔を出したので、良守は再三言っていた言葉を繰り返した。修史は笑いながら頷く。
「うん、気をつけてね。限君も楽しんでおいで」
「はい、それじゃ、いってきます」
二人は照れ臭そうに玄関から出て行き、限が運転する車に乗り込んで出掛けていった。
 車が走り去る音に、修史は孫達が淋しがる前に楽しげな声を出しながら背中を押した。
「よし、誠に快。じいちゃん今からお昼ご飯作るから、出来るまで二人でビデオでも観ててくれるかな?何がいい?」
修史のやさしい言葉遣いに、二人は声を合わせて笑いながら答えた。
「「ドラレンジャーのえーがのやつ!」」
「よしきた。じゃ、じいちゃんと一緒に居間に行こうね」
「うッ」
「あいッ」


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