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□愛のカタチ
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グラハムの場合。

「感動した…感動した話をしよう」
グラハムは呟く。
「人は、愛の形は様々だと言うが…
そもそも愛に形なんてあるのか!?」
シャフトは、「またか…」といった表情で、
テンションの上がり続けるグラハムを見守る。
「もしも愛に形があるとしても、
俺に愛は見えないぞ!?」
そして、そんなシャフトの気も知らずに、
グラハムはスラスラと、噛まずに長々しい台詞を言ってのける。
「どうする…?愛が見えない俺はなんだ?
とんだ不幸者か!?
ど、どーする?やべーよ俺、
なんだ?ついに神様に嫌われたか!?
運が尽きちまう!俺はどうすればいいんだ…。
悲しい…悲しすぎる…」
まだ喋り足りないのか、
さらに言葉を連ねる。

「神に嫌われたとなれば…
もう一度好かれれば良いんだな!そうなんだな?シャフト」
いきなり質問を投げかけられたシャフトは眉をひそめた。
「知りませんよ、そんな…」
『の』という字を発音する前にレンチが振り下ろされ、
強制的に言葉を遮断される。
そして、激しい衝撃が襲い掛かる。
シャフトは思わず舌を噛んでしまった。
「痛っ……!ちょ、グラヒャムさん、
舌噛んじゃったじゃらいれすか!
ろーしてくれるんれすか!
おかげで呂律がまらららいじゃらいレスか!」
瞳に大量の涙を浮かべ抗議の言葉を投げかけるシャフトをよそに、
グラハムは「うーむ」と唸っていた。
「グリャハムしゃ…グフゥ」
またしてもシャフトは
レンチで突付かれた。
「わかったぞ…
わかったぞシャフト!
“愛のカタチ”が!」
嬉しそうにレンチを振り回すグラハムに、
シャフトは非難の視線を向ける。
「いったいなんらんですか!」
まだ呂律が回りきっていないシャフトに向かって、
グラハムはまた喋り始めた。
「俺にとって、お前への愛の形が、この
レンチのカタチをしていることに気がついた!
レンチでお前を小突くとき、
俺はお前にきっと愛を表現しようとしているんだ!
すばらしき舎弟愛じゃないか!
どうする?お前と俺は幸せ者だ!
超―――ラッキーじゃねーか!
どーするよ、シャフトぉっ!」

シャフトは、フッと笑って、にこやかに笑って言葉を連ねる。

「とりあえず、黙ってください
人に怪我をさせるのが愛なら…
それを癒す猶予ぐらい与えてください!」

グラハムはおとなしく黙る。

「うーん…
俺の愛の形は人には受け入れてもらえないらしい…
こんな…こんな悲しい話があるか!?
そもそもどうしてこんなに悲しいんだ!?
何の話をしていたんだ!?
どうして俺は…

なおも喋り続けようとするグラハムに、
シャフトは諦め、
「グラハムさん、グラハムさんの愛はわかりました。
とりあえず

黙ってください!!!!!」

シャフトは久々に大声を張り上げた。
さすがのグラハムも少し冷静になったようで

「ふむ。お前の意見はよくわかった!
たまにはいいことを言うじゃないかよぅ、シャフトぉー!
じゃあ、
俺の愛を受け取るんだ!
やべー面白すぎだろ?
コレ」

パシパシ…ドスン……

鈍い音を立てて、モンキーレンチがシャフトを襲う。

「愛…すなわち…
破壊だ!」

グラハムは大空に向かって叫び、
シャフトは意識が大空へ飛んだ。

(グラハムさんの愛だけは、
二度と受け取りたくねぇ…)

グラハムは、シャフトの意識のことなど
気にも留めずに、
ただ
笑い続けた。

「愛だ!世の中愛があれば、
何でも許される!
ラッドの兄貴の殺人も!
俺の     破壊も!」

あっははははははははっはっは

というグラハムの笑い声とともに、
ひとつの歪んだ愛が
シャフトの心に刻み込まれた…。



END
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