永遠を貴方と

□十二話
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「信じて…あげて」

ポロリと呟くように口に出した。

美朱は濡れた瞳を私に向ける。

「信じ…る?」

「唯のことも、鬼宿のことも、私のことも、柳宿たちのことも」

信じて

柳宿の声に混じって別の誰かの声が頭の中で強く響いた。

「美朱がこんなに頑張ってるのに、悪いようになんて絶対ならない。
唯を…必ず取り戻そう」

こんなことしか言えない自分が嫌になる。

「月奈ちゃん」

それでも笑ってくれた美朱に心が少し軽くなった。

悪いようになんてならない。

絶対させないよ。




ス――

眠ってしまった美朱の寝顔をチラリと見て、布団から抜け出した。

美朱を起こさないように静かに部屋から出る。

「寒…」

いくら紅南国が暖かい季候と言えど、夜は肌寒さを感じて月奈はブルッと体を震わせた。

ふと空を見上げれば一面の星。

空に向かって手を伸ばす。

手を伸ばせば届いてしまいそうだと思った。

「まだ起きとったんか?」

かけられた声に振り向く。

「幻狼」

「何しとったんや?」

空に向けた手を下ろす私を見て幻狼は不思議そうな顔をした。

「星…手が届きそうだなって思って。
私の世界ではこんなにハッキリ見えないから」

「夜になれば星は出るやろ」

幻狼の言葉に自嘲気味に笑う。

「私の世界は周りが明るすぎて星の輝きが見えないの」

私の言葉に幻狼は分かったのか分からなかったのか「ふーん」と顔を空に向けた。

私も空を見上げる。


「…ね、幻狼」

「なんや?」

しばらく空を見上げて、私は幻狼に問いかけた。

「死んだら人は星になるって本当かな」

私の言葉に幻狼が少しだけ体を揺らしたように見えた。

スッと空に手を伸ばす。

それを幻狼はジッと見ていた。

「…ふふっ」

「何笑てんねん」

突然笑い出した私に幻狼は不審な目を向ける。

「どんなに手を伸ばしても…二度と触れることなんて出来ないのに」

私の言葉に幻狼は瞳を揺らす。

「…せやな」

ジッと私の顔を見た後、幻狼はフッと笑った。

「…でも」

星に顔を向けたままポツリと呟く。

「本当に星になるのだとしたら…」

幻狼が私の顔を見つめているのを感じて視線を幻狼に向ける。

「見ていてくれるなら…いつでも誇られる自分でありたいね」

そう言って笑うと、幻狼は何も言わずに星に目を向けた。
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