永遠を貴方と
□二十四話
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みんなより遅れて甲板に出ると、舟は真っ黒な雷雲に包まれていて、帆は雷が当たったためだろう、燃えていた。
「水が!」
大きくザバッと吹き上げる波が舟に入って張宿が焦った声を上げた。
このままじゃ水の重さで沈んでしまう。
「くそッッ!水がなんや!!オレの炎で蒸発させたる!!烈火…しえ〜〜ッッ!!」
「翼宿!!」
翼宿が構えた瞬間に舟は大きく揺れ、吹き上げた波にさらわれた翼宿。
慌ててそこに駆け寄ると「オレ泳げんのじゃ――ッッ!!」と手をばたつかせている翼宿が海にいた。
「翼宿!!」
「ちょ、待って美朱ッッ!!」
止めるより早く海に飛び込んだ美朱に焦る。
「鬼宿!美朱泳げない!!」
まったく泳げないことはないと思うが、こんなに荒れ狂う海じゃ、泳げないに等しい。
「あのバカ!!ι」
案の定翼宿より先に沈んだ美朱。
「待ってなさい、今縄を降ろすから!」
鬼宿が飛び込んだ後、柳宿が舟にくくられていた縄をたぐりよせる。
「月奈!!そこから離れなさい!あんたまで落ちるわよ!」
縄を降ろしながら言う柳宿に「うん…」と戸惑いながらも返事をし、翼宿が縄に掴まったのを確認して背中を向けた瞬間…
ザバンッ
「ッッ!!」
グラリと揺れたかと思ったらおとずれた浮遊感。
あ、落ちる。
スローモーションに見えた景色の中、柳宿の焦った顔と、伸ばされた手が目に入った。
ザバンッ!
背中からたたき付けられるように海に落ちて、ビリッと痛む背中と冷たい海の水のおかげで意識はハッキリしていた。
泳がなきゃ。
そう思っても波が高くて、思ったより海面に顔が上がらない。
「――――ッッ」
息、苦しい…。
吐きだしちゃダメだ、と思い出ながらも、苦しさにゴボッと息を吐き出した。
あぁ…、
こんなとこで死んじゃうのかな…。
パラパラと白く浮かんで行く泡を見ながら目を閉じた。
残す方と、残される方と、どっちが辛いんだろうって思ったことがあった。
今、分かったよ。
どっちも辛い、ね…。
私が居なくなったら柳宿はどうするだろう。
泣くかな?怒るかな?
康琳ちゃんを亡くしたとき…彼はどうしたんだっけ…。
……あぁ、そうだ。
生きなきゃ。
彼をもう二度と悲しませたくない。
動け、足。
ゆっくり目を開けると、大好きな貴方が見えた気がした。
幻覚?
やっぱり死んじゃうのかな。
だって、こんなに優しい口づけをくれるんだから。
夢かもしれない。
そう思っていると、口に何かが流れ込んで来て、ザバッと勢いよく引き上げられた。
「――ッッ…げほッ…げほげほげほ―ッッ」
「月奈!!」
「………柳…宿…?」
苦しさにむせながら確認出来たのは心地いいハスキーボイスと見慣れたちょっと怒ったような顔。
でも、それは一瞬で、怒ったように見えたのは心配していたせいだろう…、ホッと表情を緩めた柳宿を見てもう一度ゲホッと水を吐き出した。
「…ここ……どこ?」
見渡すが舟は見えない。
「ずいぶん流されちゃったみたいね…」
柳宿は未だゴロゴロ鳴り続ける雷雲を見て焦ったように言った。
こんなとこに雷が落ちてきたらひとたまりもないだろう。
「!!柳宿、あそこ!」
「!岩山…よし、あそこに上がるわよ!!」