永遠を貴方と

□二十二話
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それから柳宿が「バカッッ!」と慌てて私の口を塞ぐが、既に遅く、私の大声に駆け付けた翼宿達に柳宿の部屋にいたことが見付かってこんな状況…。

目の端にはとてつもなく冷めた目で私達を見る翼宿。

「…ちょっと翼宿、そんなやらしい目で月奈を見んじゃないわよ」

「ぶっ飛ばされたいの?」と、拳を作る柳宿にちょっと待て!と思う。

あの翼宿の目を見てどこをどうしたらそんな風に見えるんだ!

そんな柳宿に対して翼宿は「そんな顔しとるか!どアホ!」と言い返している。

最もだ。

……あぁ、

こんな場所に曝されていたくない。

今すぐ穴があったら入りたい。

むしろ作ってでも入りたい!

自分の失態にうぅ…と頭を抱えていると

「………まぁ、元気になったんやったらええけどな」

「え?」

ボソリとこぼした翼宿の言葉に顔を上げると、翼宿はフイッと私から顔を逸らした。

それに思わず笑みがこぼれる。

「翼宿ってばやっぱりいい奴だよねぇ」

ニコニコ笑っていると「山賊の頭にええ奴とか言うな!」と怒られた。

いやいや、でもホントにそうだよね…

翼宿って義賊になりそう(笑)

そんなことを考えていたら話は今日のお祭りのことになっていた。

「あ、美朱ぁ!」

その声にハッと顔を上げる。

「どーしたの?」

「おはよ」と挨拶しながら寄って来る美朱。

そうして近くまで来た美朱の赤い目を見て寝てないんだ…と知る。

眠れる…わけないよ…ね…

私は結局柳宿の手を離せなかった。

私は巫女だけど、朱雀を呼び出す為の巫女じゃない。

実際に別れろと言われたのは美朱だ…。

愛する人に触れられないのがどんなにつらいか…よく分かってる…。

それでも…傍に居たいと願うことはいけないことなんだろうか…

柳宿は…きっと気付いてる…

いつもより笑顔の多い柳宿を見ながら思った。

私達に気を使う柳宿を見て、今はまだ胸にしまっておこうと思う。

私は私だと言ってくれた柳宿。

そして、どうしたって私は柳宿から離れるなんて出来ないんだから…。

だから…美朱も悩むことなんてないんだ。

「あ、鬼宿…」

私達に近付いてきた影に気付いて名前を呼ぶと、美朱の表情は強張った。

でもそれは一瞬で…

「オハヨ、鬼宿」

美朱は笑顔を作ると「今夜お祭りあるんだって、せっかくだからみんなで行こう」と、ポンッと鬼宿の肩を叩いて鬼宿に背を向けて去って行った。

「みッ美朱ッッ?!」

その背を慌てて追う。

が、思い至って来た道を振り返って「鬼宿!」と声をかければ、鬼宿は私の声に振り向いて私を見た。

その表情に悲しくなる。

「美朱と何があったかわかんないけど…ちゃんと話してみて!」

そうして再び美朱を追う。

ふたりなら絶対大丈夫。

どんなことだって、乗り越えてきたんだから…。
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