永遠を貴方と

□十八話
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ただっ広い宮廷の中をコソコソと隠れながら歩く。

それにしても兵士の数が少なすぎる…。

夜の宮廷なんて見張りの兵があちこちに居るものじゃないのか――

月奈は紅南国の宮廷を思い出しながら考えた。

やはり罠かもしれない…。

そう考えても、今更唯に会わずに引き返すことも出来ない。

そうして心配そうな柳宿の顔が浮かんだ。

こんなことしてるって知ったら絶対怒るよね。

そう思って苦笑する。

すると足元にフワリとした感触を感じてビクッと肩を揺らす。

悲鳴を上げそうになるが、どうにかそれを飲み込んで堪えた。

半泣きで恐る恐る足元に目を向けると

「にゃー」

なんとも可愛らしい声に目を丸くしてそのふわふわの固まりを見つめる。

「ネコちゃん!」

そこにいたのはまだ名前もない軫宿の猫。

「あなたどうしてここに」

美朱に抱かれていたはずなのに…。

コソコソと声をひそめながら、そこにしゃがみ込む。

すると軫宿の猫はまるでこっちに来いとばかりに先に進んでは私を振り返る。

「そっちに何かあるの?」

そう尋ねても答えなんて返ってくるはずもないが、唯の居場所も分からない私は猫を追う。

そうして信じられない光景を目にした。




「美朱?!」

倶東の兵に連れて行かれる美朱を柱の影に慌てて隠れて様子をうかがう。

なんで美朱が――!

井宿と翼宿はどうしたんだろうと不安がかすめる。

私が居ないのに気付いても、井宿が私を探す為に美朱を危険に晒すわけがないと思っていたんだけど…。

今更悔やんでも仕方ないが、軽装な行動をしてしまった自分を責める。

そして突然後ろからグイッと引っ張られる感覚に「きゃ?!」と思わず悲鳴を上げてバッと振り返る。

「なんだ貴様ッッ!どうやってここに入った!」

振り向くと、倶東の兵が私の腕を掴み、怪しむように私の全身を見た。

しまった―ッ!

そう思うが既に遅い。

美朱に気を取られて油断してしまった。

兵は来い!と私を引っ張ると、すぐ前方の開け放たれた部屋へと入った。

「唯様、鬼宿様、将軍がお呼びです」

え――?

唯と鬼宿と言う声に目を向ける。

すると、良く見知った顔の少女と目が合った。

そしてみるみる驚いた顔に変わる私の大切な幼なじみ。

「月奈…」

先に声を出したのは唯だった。
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