永遠を貴方と

□十四話
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少華さんの家にいた私は星宿に抱きかかえられてきた美朱を見て愕然とした。

「美朱…」

寝台に横たわり、辛そうに息をする美朱の額から流れる汗を拭う。

「ひとつだけ…彼女を救う方法があります」

少華さんはしばらく美朱の様子を眺めると口を開いた。

「今すぐ彼女を殺すのです」

「なに…言ってるの……?!」

少華さんの言葉にバカなことを言わないでという思いを込めて少華さんを見る。

「そのようなこと!出来るわけがないであろう!!」

星宿も珍しく声を荒げる。

だが少華さんは静かに続けた。

「このままでは美朱さんが辛いだけです。
私なら、すぐ健康な状態に生き返らせることが出来ます」

そうすることが当然のように少華さんは静かに言った。

ギリッ

噛みしめた唇からジワリと血の味が口に広がる。

「あたし…いいよ」

「?!!」

「美朱!起きていたのか」

「このままじゃ…朱雀七星を捜せないもん。
楽になりたいし…お願い!」



「な…に…ゆってるの…?」

絞り出すように声をだした。

「月奈ちゃん?」

美朱が私の声がする方向に顔を向ける。

「バカなこと言わないでよッッ!!!!」

美朱に顔が見えない分、大声で怒鳴った。

「だって…このままじゃ鬼宿と唯ちゃんに2度と会えない!」

「だから?!だから私や星宿に美朱を殺せっていうの?!」

「あたしの為を思うんだったら――ッッ」

パン――ッッ

「月奈…」

ジンジンと痛む右手をゆっくり下ろすと、私に殴られた頬を押さえて呆然としてる美朱を見てボロリと我慢出来きなかった涙がまばたきと同時にこぼれ落ち、ポタリと床に水たまりを作った。

「……ん…で」

「月奈…ちゃん…?」

「なんで…よぉ…」

元の世界でこんなに感情を表したのはいつだっただろうか。

「美朱…私も月奈も、お前を殺すことは出来ん」

「…でも―ッッ」

「ならばお前は殺せるか?
愛する者を…友を…この手にかけることが出来るか?!!」

星宿がそう言うと、美朱はハッと表情を強ばらせた。

「もう…大切な人を誰も失いたくないよ」

「月奈ちゃん…ごめん…ごめんなさい」

美朱の泣きそうな声に、私は美朱に手を伸ばしてそのまま抱きついた。

「私こそ…ごめんね、痛かった?」

そう聞けば美朱は

「叩いてくれた月奈ちゃんの手も痛かったんだからおあいこ」

と笑った。

「絶対…絶対美朱のこと助けるから…だからもう少しだけ頑張って」

「うん、あたし頑張るよ」

そう微笑む美朱と月奈を星宿は優しく見つめた。
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