永遠を貴方と

□十三話
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小さい頃に父に連れられて入ったお化け屋敷。

それは幼かった私にとってトラウマとでもなりえそうな…



既にトラウマであり、常にそういったものからはことごとく回避して生きてきた。

なので今のこの現状は

私にとって悪夢でしかない。




《肉をくれ…もっと》

《出させん
この村から》

《お前達の…肉を…肉をくれ》

ズルッと腐った皮膚が重力に逆らうことなく体を滑り落ちた。

「これも妖怪物の怪の仕業ってわけ?」

柳宿はそばに生えた木を抜き取ると、ゾンビを殴り倒した。

「月奈、美朱を頼む」

星宿は私のそばに美朱を横にすると剣を抜いて斬りつけてゆく。

しかし、ここは墓場。

次から次へと湧き出してくるゾンビに、次第に顔色が変わる。

「これじゃきりがないわ」

柳宿はゾンビを投げ飛ばしながら焦りを浮かべる。

「美朱…月奈、逃げろ!」

星宿に名前を呼ばれてビクッと体を揺らす。

気付けばゾンビが美朱に迫っていた。

「美朱ッッ!!」

慌てて触れさせまいと美朱を引き寄せてギュッと抱きしめるが、そうしたところでどうなるわけでもなく、ズルズルと地をはいながら近寄って来るゾンビ達にボロリと涙がこぼれた。

「やッッ!!」

美朱を握る手に力を込め、抵抗するかのようにか細く声を上げた。

ダメだ

怖いッッ!!!!

カタカタと震え出す体。

「月奈ッッ!!!!」

遠くで柳宿が叫んでる。

せめて美朱を守るようにギュッと抱きしめた。

「烈火神焔!」

ゴオオオオオ

「…え?」

一瞬にしてゾンビ達を灰にしてしまった炎に目が点になる。

「…んまに、こんなことやと思たで!」

「幻…狼…?」

ストッと私の前に降りてくる幻狼をポカンと見上げているとバシッと頭を叩かれた。

「このどアホッッ!!
なんで逃げへんのじゃ!」

「美朱ほって逃げれるわけない」

そう言うと幻狼は呆れたようにため息をついた。

「幻狼!あんたなんで…」

すぐに駆け寄ってきた柳宿。

「ほんまは来る気なかってんけど、お前らだけやったら頼りないさかいな!
話し合うて攻児が頭になったんや。
先代も…許してくれはるやろ」

そう言って幻狼はチラリと私の顔を見た。

「?」

「………」

それを見て柳宿は無言で幻狼を見ていた。

「え?なんで私たちと一緒に…?」

わけがわからないとばかりに幻狼を見る美朱に幻狼は呆れたように言った。

「アホ。
まだわからんのか」

スッと腕を捲り、私たちにそれを見せる。

「“翼宿”はオレや。
騙しててすまんかったな」

腕に浮かび上がっる“翼”の字。

「「あ――ッッ!!!!」」

「なんでもっと早く言わなかったのよボケ――ッッ!!」

「全く苦労かけおって!」

「しゃあないやろ!
オレかて頭にならなあかんかったんや。
先代とみんなの意志無視できるか?!」

柳宿と星宿の怒りに慌てて弁解する翼宿。

「でも攻児やみんなは「行ってこい」ゆうてくれたんや」

誇らしげに笑う翼宿の顔を見て、あの山賊達は本当にいい仲間なのだと感じる。

「そっか…来てくれてありがとう。
で、どこに字があるの?」

「え??」

「何…ゆうとんねん。
ほら見せとるやんけ」

美朱の言葉に翼宿は字の浮かび上がる腕をズイッと美朱に向ける。

「え…そうなの?
おかしいな…影はわかるんだけどあんまり見えないの」

ゴシゴシと目をこすりながら目を細める美朱に、嫌な考えが脳裏をかすめる。

「まさか…」

高熱の後、体の一部が麻痺する――



失明――?!!
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