永遠を貴方と
□二十三話
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「おー!すごいっすねー!」
明朝、私達は用意された舟へと荷物を運んでいた。
と、言ってもほとんど宮廷の人達がやってくれてて、私達の為の船出なのに、私達の方が手伝ってる…って感じだけど(笑)
「この舟はお前達のものだ。
北甲国まで自由に使うが良い」
こんなに立派な舟なら北甲国までなんの問題もなく着くだろう。
「いよいよ明朝出発なのねー」
「ん?何やってんだ翼宿」
鬼宿の声に、ん?とそちらを見ると、
「………何やってんの、翼宿…?」
木の影からジッと舟を見ている翼宿。
結構不審者だよね、あれ。
「な、なんでもあらへんわい!」
そうは言っても顔色が悪い気がする。
「翼宿?大丈夫?顔色悪いよ?」
心配になって顔を覗き込めば、グイッと誰かに腕を引かれた。
誰か……なんて、振り向かなくても分かるけど。
「どうせ変なものでも食べたんでしょ!」
私の後ろから聞こえた声に苦笑して彼を見上げる。
「……なによ」
フフッと笑っていると、柳宿は悔しそうに私を見た。
「別にぃ?」
そうしてもう一度笑う。
最近気付いたんだけど、柳宿はものすっごくヤキモチ妬きだ。
それがなんだかくすぐったいような、嬉しいような。
そうして時々、彼をからかってみたりする。
普段、私の方がからかわれてるんだから、ちょっとくらいいいよねー。
「ははーん、さてはお前カナヅチだな!」
鬼宿の言葉にまさか!と思っていたが…
「何を言っているんだい、セニョール!この僕が泳げないなどという情けない男とお思いかい?」
「ふふふ、心外だなあ」と不自然な笑いで笑う翼宿の顔には冷や汗がダラダラと流れている。
「あ、泳げないんだ」
ポツリとそう言えば、
「そんなはずないだろう月奈くん」
翼宿は冷や汗をダラダラ流したまま気持ち悪い笑いで私を見た。
月奈くん?!ι
ヒッと柳宿にしがみつくと、鬼宿は「どりゃ!」と、それはもう心底楽しそうに翼宿を河に捨てようとしていた。
ぎゃああああ!と翼宿の断末魔が聞こえたけど、じゃれてるだけのふたりを傍観することにした。
「そういえば、美朱はどうしたのだ?」
「部屋で自分の荷物詰めてたけど…」
「ちょっと、あんた達!いつまでもじゃれてないで運ぶの手伝いなさい!」
「あたしこんなにか弱いのに」とブツブツ言いながら大量に積み重ねられた荷物をヒョイッと持ち上げてしまう柳宿に苦笑する。
私も働かなきゃと思って、よし!と意気込むと、
「みんなこっち向いてー」
カシャッ
ん?と思って振り向けば、カメラを持った美朱が「へへへ」と笑っていた。
「あれ?それ、ポラロイド?」
「へへーッ、記念、記念!」
出てきた写真を覗き込めば、ガッチリポーズを決めてる3人と、マヌケな表情の私が写っていた。
………無意識にポーズ決めてるこの人達は何(笑)
「おお?!こんなところにオレが!!」
「こいつはニセモンや!ホンモンはオレやで!!」
初めて見る写真に動揺している鬼宿と翼宿に「わかってるってば」と笑う。
「へー、あんた達の世界にはすごいもんがあるのねぇ」
しみじみと言いながら、柳宿は何かに気付いたように美朱の腕を掴むとズルズルと美朱を引っ張って行く。
「?」
なんだかこそこそしているふたりに首を傾げる。
何やってるんだろう…。
モヤモヤする気持ちに、胸元をギュッと握りながら柳宿のヤキモチ妬き…だなんてからかえないかも…と思った。
「もー!分かったよ!その代わりお礼はずんでよね!!」
お礼??
「分かってるわよ!」
そうして戻ってきた美朱と柳宿の顔をジッと見る。
「何の話??」
なんだかにこやかな柳宿の顔を見て尋ねれば「べ、別に何でもないわよ」と私の頭をグシャグシャ撫でる。
「わ!何すんの!」
それに慌てて柳宿の手を掴む。
「あはは」と上機嫌に笑う柳宿の笑顔にときめきながら「もー!!」と手ぐしでグシャグシャになった髪を直した。
「月奈ちゃーん!柳宿も!みんなで写真撮ろー?!」
美朱のウキウキとした弾んだ声。
美朱は「ほら、並んで並んで!」とみんなを並べている。
「月奈ちゃんはあたしの隣ね!」
ギュッと腕を絡めてくる美朱に自然と笑みがこぼれた。
「みんな準備いいー?ちゃんとカメラに向かって笑ってね!」
はい、チーズ!
美朱の声と共にカシャッとシャッターがおりた。
私と美朱を真ん中に、笑顔のみんな。
大切な大切なこの瞬間。
美朱に「はい、月奈ちゃんの分!」と渡されたそれを大切にギュッと抱きしめた。