永遠を貴方と
□十七話
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「じゃあ皆さん元気でね!」
「巫女様も…皆様どうもありがとうございました」
朝になって、私達はお世話になった鬼宿の家族にお礼と別れを済ませる。
「なんだか朱雀七星士が全員そろったなんて信じられませんわね」
「うむ、でも良かった」
私は昨日感じた違和感を忘れて柳宿と星宿の会話にふわりと微笑んだ。
これで鬼宿を倶東からから取り返せば――
(良かったね、美朱)
鬼宿の家族に挨拶している美朱に目を向ける。
その時、結蓮ちゃんが美朱の腰にギュッとしがみついた。
「姉ちゃん行っちゃやだ!!」
「結蓮ちゃん…」
「こら結蓮!巫女様に失礼じゃないか!」
妹の様子に忠栄君は慌てたように結蓮ちゃんを咎めた。
「だって姉ちゃん、兄ちゃんのお嫁さんだもん!だからずーっと一緒にいるんだもん!」
微笑ましい光景だが、このまま一緒に居るわけにも、連れて行くわけにもいかない。
かといって引き離すことも出来ずに、私達は困ったようにその様子を見ていた。
「結蓮!!離れるんだ!」
「やだやだやだ!」
〜〜〜〜♪
「張宿!?」
いきなり笛を吹き始めた張宿にみんな目を向ける。
「ぎゃーッッ!結蓮ちゃんが…」
くったりと意識のない結蓮ちゃんを見て、翼宿は動揺して張宿の胸ぐらを掴んだ。
「あほかーッッ!脳乱れさせてどないすんやーッッ!ι」
「寝ちゃった」
ガクッ
美朱の思いもよらない言葉にズッコケる。
「今のは催眠効果のある曲です。
きっと今いい夢を見ていると思います」
「兄ちゃん…」
鬼宿の夢を見ているのか、嬉しそうに微笑む結蓮ちゃん。
その柔らかい表情に私も頬を緩めた。
(大丈夫だよ、結蓮ちゃん。
鬼宿はすぐに帰ってくるからね)
結蓮ちゃんの寝顔を見て、美朱も同じことを思ったのか、結蓮ちゃんに微笑むと、寝てしまった結蓮ちゃんを鬼宿のお父さんに渡し、私達は鬼宿の家を後にした。
「やっぱり私が聞いたのは張宿の笛だったのね」
「え?」
突然私がそう言うと張宿は私を振り返った。
「さっきのと同じ、優しい音色だったから」
私がそう言って笑うと、張宿は瞳を揺らした。
「優しい…ですか」
「張宿?」
「あ、いえ…ありがとうございます」
そう言って笑う張宿。
でも、その笑顔は音色と同じ、どこか悲しそうだった。