*novel*
□香りと温もり
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「……痛い」
「自業自得だ、愚か者」
セブルスは視線をレポートへ向けたまま、眉間に皺を寄せ言った。
地下室のソファにちょこんと座る鳶色の髪の人物の左足首には、白い包帯が巻いてある。
「信じられない。何もないところで転ぶなんて」
リーマスはぽすんとソファに横になった。
その目はうっすらと潤んでいたが、本人は自覚していない。
―――香りと温もり
リーマスは珍しく暖炉ではなく校内の通路を使ってきた。
声とは裏腹に弱々しいノックがいつもと同じように鳴る。
面倒くさそうにゆっくりと地下室のドアが開き、細い隙間から黒い髪と瞳が覗いた。
セブルスはその瞳を細め、ほとんど口を動かさずに何の用だと呟いた。
「うん、一緒にお茶を飲もうと思って…」
リーマスはにっこりと笑おうとして失敗した。
どこか痛みを耐えるような…現によく見ると顔色が悪く額には汗をびっしりとかいている。
セブルスは思いきり顔をしかめて勢いよくドアを開けた。
「入れ」
いつもと異なる相手の出方にリーマスは内心溜め息をついた。
些細な変化もすぐに読み取る彼には、隠し事など到底できないのだ。
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