*novel*

□もう少しだけ
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セブルスは背中に軽い衝撃を感じた。
振り返ろうとすると後ろから腕が伸びてき、よく聞き慣れた声が自分の背中から聞こえた。

「来ちゃった…」








―――もう少しだけ









「貴様、任務はどうした」
「うん」
「答えになっていない」

テラスの席に座る元同僚を睨みながら、セブルスはいつものクセで杖を振って紅茶を用意した。
それがリーマスの目の前に出てから、セブルスは我に返り舌打ちをした。

「ありがとう…」

リーマスはすぐに手をつけようとはせずに、庭に目をやった。
目の先にはセブルスが手入れをしている花壇がある。
しかしその目には何も映していないようだった。

「それで、いつまでいるつもりだ」

不機嫌そうにセブルスは大きめな声で言った。

「君の…」

ぼそっと無意識に言葉を発したあと、リーマスはセブルスに向き直った。

「君に出て行けって言われるまで」

にこっと冗談めかして言った。
セブルスがこの笑顔を嫌っているのを知っていたが、出てきてしまうのだから仕方ない。
案の定、セブルスは眉間に皺を寄せた。
しかし口から出た言葉は意外なものだった。

「そうか」
「…言わないの?」

少し驚いた顔をしているリーマスを見もせずに、セブルスは答えた。

「言ってほしいのか」
「うん、ううん…優しいね」

ふるふると弱々しく首を振るリーマス。
自分でも気付いていないのだろうが、顔が真っ青だ。
セブルスはまたも舌打ちしたいのを堪えた。
青白い顔のままリーマスはやっぱり、とにっこり笑った。

「ありがとう」





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