*novel*

□冷たい雨と本当の笑顔
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その日は、朝から雨が降っていた。まるで泣いているかのように。

+ + +

我輩は、いつもと変わらず部屋にいた。
前からだったが、最近はとくに部屋にいるようになった。
一度、出かけているときにヤツが来て、散々待たせてしまったことがあるから。
もちろん、我輩は悪くない。ヤツだって、判っている。
しかし、あまりにも泣きそうな顔をするから。
平気なふりをして笑っていたが、ヤツは独りになることを極度に恐れるから。

側にいてやらねば、と思った。


「セブルス〜いる〜?」
「何の用だ、ルーピン。我輩は貴様のように暇など余していない。」
――ばふんっ――
「何してるの?」
いつもこうだ。忙しいと言っているのに。
「次の授業で扱う薬品の下準備だ。」
「ふうん?大変そうだねぇ。」
わざとらしく薬品を眺める。
こいつと逢うのは、ホグワーツを卒業して以来だ。
あのときから変わらない大きな目に、悲しそうな笑顔。
「お茶、煎れてくるよ。君はお砂糖、いらないんだよね。」
そう言ってパタパタと歩き出す。
学生時代の頃にはあまりなかった身長差のおかげで、こいつが危なっかしく見える。
「あれーっチョコレートケーキがあるっ!どうしたの!?これ!!」
「招いてなくとも貴様は一応、客だからな。」
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