*novel*
□ダフォディル
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セブルスは花を見ていた。
黄色いそれは確かウェールズの国花で、花の中央にある筒状の花びらは王冠のようにも見える。
花言葉は知らない、というかそもそも花に興味がない。
セブルスにとって植物とは調合に関する情報のみ知っていれば充分で、それ以上でも以下でもなかった。
材料以外の目的で花を買ったことはない。
それが何故、通り抜けようとしたマーケットの花屋の前でうっかり足を止めたのか。
自分の行動に動揺しているのか、何か考え込んでいるのか、今や花を睨みつけている。
正確に言うと、花の横に置いてある手書きのメッセージボードを、眉間に皺まで作りながら睨みつけていた。
色とりどりの花と黒尽めの陰気中年男性の組合せは、言わずもがな違和感たっぷりだ。
そんなセブルスにお構いなしで、店員が景気の良さそうな声と共に近寄ってきた。
「ダフォディルですね。贈り物ですか?」
「…あー」
店員に気付いていなかったセブルスは、突然の声にはっとした。
口からは間抜けな音が出たが、店員は構わず続けた。
「旬の花ですよ。飾るのも今、贈るのも今が最適です」
マグルの長年における品種改良と高度な科学技術により、年間を通し様々な花が手に入る世の中だが、やはり旬なものが良いらしい。
『今月のおすすめ』という文字もメッセージボードに書かれていた。