*theme novel*
□ちらりと見えた素肌
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フルーパウダーが指の隙間からさらさらと流れていく。
いつもより多いその量に、ルーピンは少し長い溜息をついた。
「うーん、疲れてるなぁ」
ざっとパウダーを振りかけた炎が緑色に変わるのを確認し、暖炉へ入り込む。
おかしな発音にならないよう、いつもより丁寧に行き先を口にした。
ーーーちらりと見えた素肌
移動が終わった頃を見計って、ルーピンが恐る恐る目を開けると見慣れた部屋が視界に入ってきた。
無事に目当ての部屋に移動できたと安堵し、一歩足を踏み入れる。
「ふう。お邪魔しまーっぁっ!?」
だが足に力が入らず、ぐらりと身体が揺れた。
そのまま前に転ぶように倒れていく。
ルーピンはぎゅっと目を瞑った。
ビターン!
咄嗟に両手を出したので、掌が床を叩く音が響いた。
四つん這いの格好にはなったが、顔を打つことはなんとか免れたようだ。
いつもより余計にずっしりと重たく感じる身体をプルプルと震える腕で支え、なんとか立ち上がった。
手が痛い。じんじんする。
そして、情けなさ過ぎて泣けてくる。
恥ずかしさやら絶望感やらが疲れた身体をぐるぐるとまわっていくようで、なんだか目頭もじわりと熱い。
ルーピンが眉間をきゅっと上げたそのとき、ごほん、という咳払いが聞こえた。
「これはこれは。大変お忙しい闇の魔法に対する防衛術の教師が、一体何の御用ですかな」
うっすら涙を浮かべた目を声の方へ向けると、ソファで読書をしていたこの部屋の主、スネイプと目があった。
瞬間、今の今までどん底だった気分がぶわっと上昇した。
「セブルスー!」
ポロリと出た涙を拭うこともせず、ルーピンは少しふらつきながらスネイプの座っているソファまで移動する。
「こんばんは、調子はどう?あのね、わたしはちょっとだけ忙しくて、それで疲れてしまってね?これはもうセブルスに会って癒されないとって思ったんだ」
すとんとスネイプの隣に腰を掛けて、ルーピンは矢継ぎ早に口にする。
そんなルーピンを尻目にスネイプの目線はルーピンの手をちらりと見やり、手元の本へと移っていった。
「残念ながら我輩は癒者ではない。お引取り願おう」
スネイプの興味は本へ戻ってしまった。
しかしそれはいつものこと。
嫌味っぽく帰れと言われるのもいつものこと。
「大丈夫!魔法とかいらないから!」
それでルーピンが帰らないのも、いつものことだ。