*theme novel*

□唇から覗く舌
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しゃりしゃりしゃり。

ギラギラと照りつける太陽から隠れ、影では涼しげな音が響いていた。

しゃりしゃり。

取っ手をくるくると回すと、塊だった氷がふわふわになって出てくる。
それが楽しくて、リーマスは額から流れる汗にも気づかないで夢中で取手を回した。




―――唇から覗く舌




「マグルの物など持ち込みおって」

その光景を部屋から見ていたセブルスは、イライラしながら独り言を呟いた。
楽しげにレバーを回しているリーマスをじろりと睨む。

クリスマス休暇を学校で過ごすセブルスにとって、夏の長期休暇は貴重な時間。
それを、元同僚のリーマスに邪魔されているのだ。
しかも退職に追い込んだのはこちらだというのに、リーマスは平然と自分の前に現れ、何事もなかったようにヘラヘラと…。
いや、むしろ腹いせか嫌がらせで来ているのか、と結論を出しだセブルスはさらに強く睨みつけた。

視線に気が付いたリーマスは睨まれるのは慣れているようで、にっこりと笑い返す。

「もうすぐ終わるよ。ね、何味にする?」

「…は?」

リーマスからの質問の意味が分からず、セブルスは眉間にしわを寄せる。
耳に届いていたしゃりしゃりという涼しげな音が消え、代わりに楽しそうなリーマスの声が響いた。

「この氷に、シロップをかけて食べるんだよ。ほら!」

リーマスが杖をひとふりすると、色とりどりのシロップがセブルスの周りに出現した。
ふよふよ浮いているそれらは見るからに甘そうで、着色料がたっぷり。
セブルスの眉間のしわがさらに深くなった。
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