*novel*
□ダフォディル
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「これなんか、元気が良いので長く保ちますよ」
そう店員が持ち上げた鉢植えには、しっかりとした花が植わっていた。
主張をするようにあちこち飛び跳ねた葉を見た途端、ある人物がセブルスの脳裏を掠った。
「それはない」
眉間に皺を寄せたまま、セブルスはじろりと店員に目線を移した。
何を言っているんだ素人のくせに、とでも言いたそうに店員は目を見開いた。
「今ある中ではこの子が最高です」
即座に駄目出しをくらったが諦めずに食い下がる姿はまさに商売人だ。
だがいくら勧められても、鉢が狭過ぎるとばかりに外に飛び出ようとするこの花は無性に苛つく。
セブルスは足元にある植木鉢を指差した。
「これで良い」
店員は今度は口を開けてセブルスが選んだ花を見つめた。
整った形はしているが、背丈はあまりなく、細めでひっそりと咲いている。
先程勧めた物と同じ種類とは思えないほど大人しい印象だった。
「確かに全体の割りに大きめの、形の良い花をつけているけど。きっと長くは保たないですよ」
すぐ枯れても文句は聞きませんよ、と念を押される。
だが、セブルスには長く保つものを買うという概念がなかった。
高度な技術を持っているのはマグルだけではない。
半永久的にそのままの花の姿を残す方法が魔法界にはある。
保つ、保たないは関係ないのだ。
それに―――
「今日だけ保てば良い」
そう言ってマグルの紙幣を店員へ渡すと、セブルスは鉢を受け取った。
思っていたよりもずっしりとした重さで、細くても懸命に咲く姿は生命力を感じた。