長編

□●one on one 19P完結
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 帰ると灯りがついている。一人で暮らしていた時にはなかったことだ。リョーマが待っている、それだけで嬉しい。手塚は居間のドアを開けた。
「越前、帰ったぞ」
 声をかけると、ソファーに沈み込んだ身体が起き上がる。足が冷えるからと与えたボアのスリッパが軽やかな音を立てた。
「あ、おかえり」
「不二から土産だ」
「アリガト…うまそう」
 持たされた果実には滋養がある。熟した実の匂いにリョーマの口許が緩んだ。
「すごい、いい匂い…」
「冷やして食べるといいらしいぞ」
「ん、そうする」
 風呂上がりのリョーマからは湯気が上がっている。
 大きめのシャツから伸びたしなやかな素足。華奢な後ろ姿に愛しさがこみ上げる。背後から抱きしめると、リョーマはくすりと息で笑った。
「アンタの身体、冷たい」
「そうか」
「うん。部長も風呂に入ったら? あたたまるよ」
 腕の中にある小さな身体。ほんのりと色づいた肌から甘い匂いがする。
「おまえはあたたかいな…」
「まあね。風呂上がりだし」
 かさのない乳房を包み、持ち上げる。力を入れると張りのある肉が掌の中で揺れた。
「ぶちょ…?」
 何かを確かめるようにやわらかく揉み込む。ささやかな主張は隆起と言うにはあまりにも薄い。
「今更だけどさ。小さいなんて言ったら怒るよ」
「俺には片手で足りないくらいで丁度いい」
「何、それ…」
 布越しに触れた硬い先を挟んで、親指で撫でながら押しつぶす。
「ん……」
 鼻にかかった声がもれる。リョーマは触れられるだけでも反応を返すようになった。
「…ね、部長」
「うん…?」
「顔、見えない」
 正面を向いて額を合わせる。ふざけているみたいに、じゃれながら交わす口づけ。
「や、つめたい」
 冷え切った指先に震える熱い身体。シャツのボタンを外しながら触れると、甘い声がこぼれる。
 身じろぐとあらわになる白い肌。まだ華奢な腰から背中の線が扇情的だ。細い肢体をソファーの上に横たえた手塚は、そのまま覆い被さった。
 淡い翳りが隠しきれない場所。今ではすっかり少女の身体になったリョーマの下肢を押し広げる。手塚はなめらかな内腿に唇を這わせた。灼けない白い腿。足のつけ根のやわらかい皮膚。
「ん…ぅ」
 その場所は、躊躇せず長い指を呑み込んだ。熱い胎内をゆっくりと撫でる。吸い込まれそうに深い、とろとろと溶けるような感触に手塚は夢中になってしまう。傷をつけないようにと念入りに拓いていると、ゆるく背中を叩かれた。
「越前…?」
 焦れたのか、リョーマは潤んだ眼で睨んでいる。
「ね…もういいって」
「駄目だ」
「何でそんな意地悪すんの…?」
 涙目で睨まれると体温が上がる。上目遣いの威力をリョーマは分かっていない。
「意地悪じゃない。おまえが可愛いから」
 傷つけたくないと囁くと、悔しそうに口許を結ぶ。
「大丈夫だって…だから」
 急かす声と熱い息が絡まる。
「あ…ぁああ…ぅ」
「…越前」
 汗で滑る肌が湿った音をたてる。
「ぶちょ…」
 手塚は吐息で笑ったリョーマの頬に口づけた。
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