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□メイド喫茶ごっこ
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「見て見て、日向くん!」
嬉々とした声に、今度は何を見つけたんだと、何の気なしに顔を向ける。その瞬間に、お茶をふきだした。え、なにやってんのコイツ? バカなの?
「どうかな、これ」
「すごく気持ち悪いです」
小さい方でも充分気持ち悪いが、まだマシだ。確かに顔は綺麗だけど、長身のコイツが、メイド服って。誰が着せたんだ? サイズがぴったりあってるってことは、もともと男用のコレを所持していたか、わざわざ作ったってことだ。
「誰だよ、そんなもの着せたやつ」
「篠原さんだよ。なんかね、一部では需要あるから着てみてくれって」
「あいつかぁ〜!」
あいつはリアリストだ。非現実的なことはしない。でも、これが、本人が言うように、需要があるんだったら話は別だ。つーか、なんだ? こいつがこれ着てなんの需要があるってんだよ。
教えてくれ。……あ、やっぱりいいや。知りたくない。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「は?」
「って言えって。あんまり言いたくないんだけどなぁ。ご主人様ってところ」
「あとはいいのか」
いや、なんの抵抗もなく、メイド服なんか着てやがるんだから、訊くだけ無駄か。
「ねぇねぇ、それで指導ってなにするの?」
「なにわけわかんねーこと言ってんの?」
「だって篠原さんが、メイド喫茶の仕事内容は、日向くんが教えてくれるって」
いやいやいや、聞いてねーよ。つーか、メイド喫茶やらせるつもりなのか。どんな需要だよ。とりあえずこの学校のなかじゃ必要なくね?
「日向くんってば」
「ああ、うるせ。いいんだよ。そんなことしなくて。それよりさ」
ぐっと腰を引っ張る。そのまま手を滑らせて、緩やかなラインを撫でた。けっして、その格好に興奮したとかじゃない、むしろ萎える。……でも、まぁ、我慢できない範囲じゃないし。たまってるし。
「ええー、メイド喫茶はお触り禁止とか言ってたよ」
「俺はメイド喫茶ごっこに付き合う気はないの。イメクラに変更でいいじゃん」
「イメ……?」
「いいから、いいから」
椅子から立ち上がって、うまいこと六道を押し倒す。……いや、半分自分から動いてたけど。だって初めてってわけじゃないし。あーあ、小さい方にもどったら、今度はなんて言ってやろうかな。「腰が痛い」わけ。