その他版権
□泣き出したいのは譲ろうか
1ページ/3ページ
本編→三人称花礫視点。オマケ→三人称ツクモ視点です。
「花礫くん!」
「なんだよ、朝からうぜーな」
唐突に部屋に乱入した與儀に、花礫が不機嫌に答える。
ドアの開く音に驚いた无に、ごめんねと謝罪しつつ、花礫のいる二段ベッドの上に上がった。
「俺、いいこと考えたんだ!」
「ああ? どうせくだらねぇことだ――」
「結婚しよう!!」
花礫の言葉を遮って吐き出された言葉に、思考が固まる。
あまりの驚きに声にならない声しか出ない。
「ずっと思ってたんだ、花礫くんが犯罪に慣れなくても生きていけるにはどうすればいいのか」
「……へぇ」
「いくらダメだよって教えても、花礫くん上の空だし。いつかまた、そういうことせざるを得ない状況になるかもしれない。そんな時、とめる相手が必要だって気づいたんだ!」
「それ、自力で気づいたんじゃねぇだろ?」
「えっ、凄い! よく気付いたね。イヴァ姐さんからアドバイス受けたんだっ!」
返ってきた言葉に花礫は溜息を吐き、いかにも機嫌悪そうに與儀を睨みつける。
「迷惑なんだよ」
「なんで? 俺、頑張るよ! 花礫くんが悪いことしなくてすむように稼ぐし。何かあったら、全力でとめる。花礫くんは元々いい子なんだから、周りに誤解して欲しくないし」
「いい子? 反吐が出る。だいたいなぁ、“更生させたいがために結婚”なんてバカげてるとしか言えねぇだろ。そういうのは好きなヤツとしろよ」
「好きだよ、花礫くんのこと」
さらりと言われた一言に、花礫のイライラはピークに達する。
ベッドを拳で強打し、叫んだ。
「あのなぁ、お前のそれは結婚云々の話になるような、そんな好きじゃないだろ!?」
「……っ、本気だってば!」
叫び返す與儀に、花礫は取りあえないと顔を背ける。
「本当に、本気だよ。どうせフラれちゃうと思って黙ってたけど。でもさ、イヴァ姐さんに相談して思ったんだ。花礫くんが普通の生活を送るための導き役は、一緒に成長していく相手は、俺じゃなきゃ嫌だって」
「……それでいきなり『結婚しよう!』かよ。いかれてんな、あんた」
フッと息を吐く。戻した視線の先にあった與儀の顔は、なんとも情けないものだった。
「――――仕方ねぇな」
「えっ」
「あんたアホだし。結婚してやってもいい。つっても、夫婦と書いて、ご主人様と犬だけどな」
「それは嫌だけど……ああ、もう、嬉しすぎて何でもいい!」
今にも泣きそうな與儀に、花礫は「情けないヤツ」と呆れ口調で罵った。