仮面夫婦

□十 再教育
2ページ/8ページ

--------------------------------------------------------------------------------


「人捜しなら、高い所です。そうですね…彼処なんて如何でしょう?」


リーが指差した方向──居酒屋を見る。
確かに通りの交差点に建ち、他の建物が二階なのに対し居酒屋は三階建てだ。

だが居酒屋にはそれらしく、柄の悪そうな男共──を気にする様な繊細な者は、此処にはいなかった。


「何処から登るんだ?」

「こっちです」


リーを先頭にテマリ・ネジと続く。

いつでも(一応仮にも女である)テマリを酔漢から守れるよう、ネジがわざと後ろに並んだのだと、テマリは気付かなかった。
──否。
それがテマリを守る為の位置だとは気付いたが、"姫君"故にそれが当然だったので、大して気にならなかった。


居酒屋に足を踏み入れると、場所に似合わない子供の姿に注目を浴びる。
特にテマリは見掛けない顔と、少しきつい印象の整った容姿──珍しい髪色に、色々な意味で目を引いた。


「おや…リーに、ネジじゃないか」

「こんにちは、綱手様」

「ご無沙汰してます」


酒瓶を片手にヒックとしゃっくりする女性に、二人が頭を下げた。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ