仮面夫婦
□十 再教育
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「人捜しなら、高い所です。そうですね…彼処なんて如何でしょう?」
リーが指差した方向──居酒屋を見る。
確かに通りの交差点に建ち、他の建物が二階なのに対し居酒屋は三階建てだ。
だが居酒屋にはそれらしく、柄の悪そうな男共──を気にする様な繊細な者は、此処にはいなかった。
「何処から登るんだ?」
「こっちです」
リーを先頭にテマリ・ネジと続く。
いつでも(一応仮にも女である)テマリを酔漢から守れるよう、ネジがわざと後ろに並んだのだと、テマリは気付かなかった。
──否。
それがテマリを守る為の位置だとは気付いたが、"姫君"故にそれが当然だったので、大して気にならなかった。
居酒屋に足を踏み入れると、場所に似合わない子供の姿に注目を浴びる。
特にテマリは見掛けない顔と、少しきつい印象の整った容姿──珍しい髪色に、色々な意味で目を引いた。
「おや…リーに、ネジじゃないか」
「こんにちは、綱手様」
「ご無沙汰してます」
酒瓶を片手にヒックとしゃっくりする女性に、二人が頭を下げた。
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