仮面夫婦

□八 祭りへ
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 最近、飲み込む言葉がある。


 それはとても簡単だというのに、何故か躊躇ってしまうのだ。
 たった一言、


『砂漠に似た色の髪を持つ少女が知り合いにいないか?』


 ……と、テンテンに尋ねるだけだというのに。


(上着を返して貰うだけだ)


 上着なら沢山あるが、あれはお忍び用。
 お忍び用の上着も沢山あるが、あれは気に入っているのだ。
 返して貰わなければ。

 自分に言い聞かせる様に考えている事に気付き、調子が狂っていると溜め息を吐いた。
 昨夜の雨で、風邪でも引いたか?


(……あの女は、ちゃんと風邪を引かなかったか?)


 自分よりも雨に濡れていた少女を思い出し、僅かに眉宇を寄せる。
 折角上着を貸してやっても、風邪を引いていたら意味がない。

 時計を見て時間に気付き、お忍び用の服を着て屋敷を出る。
 裏門からこっそりと出る時、今日の祭りにまたあの少女も来るのだろうか、と思った。
 なら祭りで会えるかもしれない、と。


 ネジが裏門から屋敷を出て数十分後


「早くしろ、テンテン」

「はいはい」


 ──上着を持ったテマリとテンテンが裏門を出て、祭りへと向かったのだった。




end
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