仮面夫婦

□三 友達百人
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 それに驚けば、救急箱を抱えた侍女が「テマリ様、失礼します」と手当てし始めた。
 スルスルと手際良く巻かれる包帯に、ほう…と感嘆する。


「ほら、出来たわよ!」

「ありがと、いの。…あの」

「ん?」


 おずおずと見てくる少女を見返す。
 と、頭を下げられた。


「テマリ様も、ありがとうございます」


 それに思わず目を丸くする。
 それはいのも同じらしく、少女とテマリを交互に見た。


「……別に、気にするな」

「はいっ」


 顔を勢い良く上げる少女は、安心したような嬉しそうな笑顔。
 最近で見慣れた筈なのに、初めて見る表情。
 きっと多分、これがこの娘の素の表情。

 思わずまじまじと見つめると、少女が慌てる。


「あっ…その、申し訳ございませんっ」

「…いや、」


 其の様子に、ゆるゆると強張っていた物がほぐされた。
 知らず、微笑む。


(大丈夫だ)


「名前…」

「え?」

「名前、教えてくれないか?」

「ぁ、サ、サクラ! 春野サクラです!」


 顔を真っ赤にさせながらあたふたと答えるサクラに、また笑みが漏れる。
 サクラの顔が更に赤くなった。


「…サクラって呼んでも良いか…?」

「はいっ!」

「お前も、呼び捨てで良い」

「えっ!? いえ、でも……」

「駄目か」


 首を傾げながら問うと、サクラがもじもじと言う。


「じゃ、じゃあ……テマリさん、と呼んでも…?」


 『テマリさん』。
 呼ばれ、嬉しくなる。

 微笑んで


「ありがとう」


 と言った。





(大丈夫だよ、我愛羅)

(夫とかは如何でも良いけど、でも)





友人は作れそうだ









To be continues...
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